<原著>視能矯正における衝動性眼球運動の応用 : 測定基準の設定と後天性眼球運動障害例の検討
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概要
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後天性眼球運動障害(Acquired Ocular Movement Disorder : AOMD)のうち動眼神経麻痺例, 眼窩吹き抜け骨折例の視能訓練による衝動性眼球運動(Saccadic Eye Movement : SEM)最大運動速度の改善について検討した.SEMは, 視標追跡装置(NEC三栄製)を使用し, 眼球運動解析プログラムで解析した.最大運動速度の測定に際しては, 正常成人を対象に設定した条件のSEM最大運動速度と指数関数的な関係が得られる水平運動幅20〜30゜と運動回数20回を用いた.右眼動眼神経麻痺例では, 眼位を矯正し融像域が右方向13゜, 左方向140,下方10゜に獲得できた.右眼SEM最大運動速度は, 内転323゜/sec, 外転365゜/secであった.視能訓練により融像域が全方向400以上に改善した時の右眼SEM最大運動速度は, 内転397゜/sec, 外転371゜/secとなり, 内転速度に約70゜/secの改善が認められた.右眼眼窩吹き抜け骨折例では, 融像が第一眼位で得られた時の右眼SEM最大運動速度は, 内転279゜/sec, 外転276゜/secであった.視能訓練後水平方向に融像域の拡大を認めたが, 右眼SEM最大運動速度は内転301゜/sec, 外転288゜/secであり改善が認められなかった.視能訓練を施行したAOMDで融像域が30゜以上獲得できた動眼神経麻痺例は, SEM最大運動速度が改善した.症例に施行した徐筋系の融像訓練は, 麻痺筋に持続的な収縮を与え, 拮抗筋の攣縮が緩和される状態を作り出している.視能訓練による外眼筋の伸展運動により, 外眼筋の血流量を増加され, エネルギー代謝が促進された結果, 融像域30゜を獲得し, 外眼筋の伸張, 収縮が安定した運動を賦活したと推測される.よって融像域の改善は, SEM最大運動速度の改善を促すと考えられる.
- 川崎医療福祉大学の論文
- 2001-08-25
著者
-
新井 紀子
川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科
-
新井 紀子
川崎医科大学 眼科
-
木村 久
川崎医科大学 眼科 学教室
-
木村 久
川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
-
深井 小久子
川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
-
深井 小久子
九州保健福祉大学視機能療法学科
-
森田 雅子
川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
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