<原著>後天性上斜筋麻痺における静的および動的身体平衡機能の評価
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概要
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後天性上斜筋麻痺の静的および動的身体平衡機能を視能矯正前・後で分析し, 定量検査としての有用性について検討した.川崎医科大学附属病院眼科視能矯正クリニックで視能矯正を施行した後天性上斜筋麻痺10例について, 身体平衡機能測定装置Balance Master MPS-1102(NeuroCom)を用い, 視能矯正前・後に静的・動的平衡機能を測定した.静的平衡機能は開瞼, 閉瞼および固視目標がある場合の3通りの条件で重心位置偏位量を分析した.動的平衡機能は先導視標にしたがって, 中心から8方向の周辺視標に重心移動を行い, 安定の限界を75%に設定して移動距離と重心位置偏位量を検討した.視機能は眼位, 回旋偏位, 診断的むき眼位, 融像域などを測定した.その結果, 後天性上斜筋麻痺の静的平衡機能検査において, 視能矯正前に比較して視能矯正後は, 開瞼, 閉瞼時ともに重心位置の安定性が認められ, 重心位置偏位量が有意に改善した(p<0.05).また固視目標がある場合は, 視能矯正前・後ともに重心位置偏位量が減少した.動的平衡機能検査においては, 視能矯正後は移動距離および重心位置偏位量に改善が見られたが, 有意な差は認められなかった.視能矯正後は後天性上斜筋麻痺の全例に視機能の改善があり, これが外眼筋自己受容器の活動性の変化に影響を与えたと考えられる.したがって, 後天性上斜筋麻痺の静的および動的身体平衡機能は, BalanceMasterを用いて定量的に表わすことが可能であり, 視能矯正前・後の客観的検査法としての有用性を認めた.
- 川崎医療福祉大学の論文
- 2000-12-25
著者
-
木村 久
川崎医科大学 眼科 学教室
-
木村 久
川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
-
深井 小久子
川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
-
難波 哲子
川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
-
深井 小久子
九州保健福祉大学視機能療法学科
-
難波 哲子
川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科・川崎医科大学眼科学教室
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