<原著>心因性視覚障害に対する事象関連電位とバウムテストの検討

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心因性視覚障害は, 高次の視覚情報処理過程に何らかの問題がある疾患と考えられているが, その発生機序や心理的特徴については未だ不明な点が多い.本研究では, 心因性視覚障害の視覚情報処理過程および心理的特徴について電気生理学的方法と心理学的方法を用いて検討した.電気生理学的方法は, 模擬信号刺激による事象関連電位(EventRelatedPotential以下ERP)を測定し, P200,P300成分の頂点潜時と最大振幅を分析した.心理学的方法はバウムテストを施行した.対象は心因性視覚障害児10名で, 視力不良時期(以下, 不良時期)と視力良好時期(以下, 良好時期)について同年齢の健常児9名を正常対照として分析した.その結果, 不良時期におけるERPのP200潜時および振幅は, 健常児と近似値を示した.一方, P300潜時は, 健常児に比べて約45msec延長した.また, P300最大振幅は, 不良時期に頭頂領域から後頭領域の広範囲に出現したが, 良好時期になると頭頂領域へ移動し, 健常児に類似したパターンを示した.さらに, バウムテストからは, 患児の心理的葛藤状態を読みとることができ, 患児がそれぞれのストレスに対して適切な対処がなされていないことが判明した.高次脳機能を反映するERPの結果から, 視覚刺激に対しての情報処理能力に遅延があることが推察された.その原因の一つとして, 脳の発達が未完成な時期に情動に影響を与える出来事が起こった結果, 高次の情報処理能力が一時的に円滑に機能しなくなったことが推察された.さらに, バウムテストは, 心因性視覚障害児の治療の糸口を探り, それを患児にフィードバックするための手段として有効であり, 心因に対する気づきを促す方法が新しい視能矯正になりうることが示唆された.
川崎医療福祉大学の論文
2001-08-25

<原著>心因性視覚障害に対する事象関連電位とバウムテストの検討

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