反応の異なるNicotiana属植物の茎に導入されたタバコモザイクウイルスの動向 (I) : N. tabacum cv. Samsun(植物防疫学)
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概要
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N. tabacum cv. Samsunの茎植物を水栽培下で供試し, 主に茎下端から純化TMV液を導入することによる茎植物体内におけるTMVの動向および感染について得られた結果を述べた。1. 切除24∿120時間後の茎下端からTMV液を15分∿3時間導入されたのみの茎植物は, ほとんど感染しなかったが, 同じ条件でTMV液を導入し, その直後に茎下端から6∿21cm上方の部位で切除または無菌的な摩擦などの処理が行なわれた個体は感染し発病した。2. 切除直後の茎下端からTMV液を15分∿1時間導入されたのみの茎植物は, 供試個体の約10%が感染し発病したのに対し, 同じ条件でTMV液が導入された直後に茎下端から5∿12cm上方で茎下部が切除された茎植物の上茎は, 供試個体の約70%が感染し発病した。3. 切除直後の茎下端がTMV液に1時間挿入された茎植物はすべてその直後に, 切除処理により感染が成立するために必要なTMVが6∿10cm上方茎部に導入されており, 感染個体の上茎の茎下部では5∿7日後にTMVの著しい増殖が認められた。4. 切除直後の茎下端からTMV液を30分または2時間導入した茎植物について, 経時的に茎下部の6cmまたは10cmを切除し, それら切除茎の上方部位におけるTMVの存否を検定した結果, TMV液を導入直後から1日後または2日後までは感染性のTMVが回収され, この時期における上記部位の切除処理のみが上茎の感染成立に関与した。しかし, 3日以降では同上部位からTMVは回収されず, 切除による感染も認められなかった。5. 同じ体形に整えられた茎植物の茎下端または茎上端からTMV液を導入した場合, 茎下端からは10分間の導入直後に10cm上方で切除されることにより上茎は感染・発病したが, 茎上端からの導入では10cm下方で切除されることにより本体に感染・発病を起こすためには2時間の導入時間を必要とし, 両茎端からのTMV液の導入速度の相違が示された。6. 茎上端または茎下端をTMV液に40秒間浸漬し, その直後に浸漬部で切断することにより, 各茎端にTMVが接種された茎植物はほぼ100%感染した。この場合, 茎上端に接種された個体では接種部位でTMVが増殖したのちcell to cellの速度で茎部を下降するが, 茎下端への長距離移行はかなり遅延し, 茎下端へのTMVの下降およびその濃度と病徴発現とは直接関係がなかった。これに反し, 茎下端に接種された個体では, 接種部位におけるTMVの増殖およびcell to cellの速度での上方への移行の様相は前者と同様であったが, 茎上端への長距離移行は前者に比してかなり早く, 茎上端におけるTMV濃度と病徴発現との間には相関が認められた。7. 茎下部を変性処理した茎植物にTMV液を茎下端から導入した場合, TMV液は変性部分を通過して上部の生組織へ導入され, TMVの存在する生組織の切除によってその部分での感染が成立しその個体は発病するというパターンが得られた。
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