高温条件下のSamsun NN タバコ植物体内におけるPeVAおよびTMVの動向(植物防疫学)
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概要
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TMVの1系統またはそれに近いトウガラシウイルスA (PeVA)の高温(30-32℃)条件下における移行について, このウイルスとTMVの常温下の局部病斑寄主Nicotiana tabacum cv. Samsun NNを主に水栽培下の茎植物(後に発根)として供試し検討した。さらに, PeVAとTMV普通系(TMV)の同植物体内における移行の相違などについて実験し, 次のような結果を得た。30-32℃下の茎植物の葉身にPeVAを接種した場合, その接種葉からのPeVAの全身的な移行は非常に困難で, 約3週間後にも移出しなかった。成葉葉柄にPeVAを接種した場合には, 接種後の比較的早い時期(約1∿2週間後)にその葉身および主茎へ, さらにわき芽へ移行したが, 他の成葉への移行は認められなかった。主茎にPeVAを接種した場合には, 接種後の比較的早い時期(約1∿2週間後)に接種部から頂茎および茎下部まで, また頂葉(またはわき芽)へ移行し, その後頻度は少なかったが, その他の成葉への移行も認められた。なお鉢植えのSamsun NNの葉身にPeVAを接種した場合, 接種2週間後には主茎へ移出し, さらに頂葉への移行が認められた。接種葉からのPeVAの移出の時期を経時的な切除によって検討した結果, 茎植物では接種約2週間後まではほとんど移出せず, 鉢植えの個体でも接種9日後まではPeVAの移出は認められなかった。30-32℃下の茎植物の葉身または主茎にPeVAまたはTMVを接種し, それぞれの接種部位からの移行の相違を接種約22日後まで比較した。その結果, 葉身に接種した場合には, PeVAは局在化されながらもある程度増殖部を拡大したが, 葉身または葉柄からは全く移出しなかった。他方TMVは, ほとんど局在化されずに比較的早期に全身的に移行し, 頂葉部またはわき芽はモザイク斑紋を呈した。同じ温度条件下で主茎に接種した場合には, 両ウイルスによる反応は多少異なったが, PeVAはTMVと同様に全身的に移行した。なおこの際のTMVのSamsun NNでの移行・増殖は, 同ウイルスの常温下での全身感染寄主のNicotiana tabacum cv. Samsunにおけるそれとほとんど同様であった。
- 神戸大学の論文
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