ウイルス感染植物の局部病斑と頂端えそ発現との関係
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概要
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1. モザイク斑紋を呈していたベラドンナから分離されたウイルス(glutinosa necrosis virus; GNV)(仮称)(宮本ら, 1965)は, 寄主範囲, 物理的性質, ウイルス粒子などからCMVに近いウイルスと推定された。このGNVをN. glutinosaに接種した場合, 植物の老若および環境温度にはほとんど関係なく, 常に接種葉に局部えそ斑(LL)を生じたのち頂端えそ(TN)となり, さらに全身えそ(SN)となって植物は枯死する。このようにLL⟶TN⟶SNと進行する現象の詳細と機構を知るために, N. glutinosaの葉位, 葉数, 部位などを変えてGNVを接種し, 頂葉部におけるえそ斑の発現様相, ウイルスの接種葉からの移行の時期とTN出現との関係, さらに頂葉部からのGNV回収可能時期とその濃度などについて1968年に行なった実験の結果をのべた。2. GNVをN. glutinosaに接種した場合, 接種葉のLLが水浸状に拡大, 褐変・癒合する時期(一般に接種後5∿7日)にTNが出現し始めた。このTNの発現は, 接種葉がより下位の場合, 接種葉数あるいは接種部分がより少い場合には多少遅れたが, 一般に時間の経過と共に頂葉部全体に拡大した。しかしこのTN発現の様相には常に1つの規則性が認められた。すなわちTN発現初期には, 接種後最初に出た+1葉あるいは+2葉および第2葉にTNが出現するが, 接種時に最も若く未展開であった第1葉へのえそ斑の出現は前記の葉より必らず遅く, 一般に頂葉部全体にえそ斑が拡大する時期まで遅延した。3. N. glutinosaの先端部を切除した個体にGNVを接種した結果, まず接種葉側の上下のわき芽にえそ斑が出て枯死させたのち, 反対側のわき芽にえそ斑が現われるのが常であった。4. GNV接種葉におけるLLの形態は, 葉位が上位の場合ほど輪郭が鮮明で, 下位になるほど不明瞭となりウイルス局所化の不完全さを示した。なおLLの出現数は, 上位葉より下位葉になるに従って増加する傾向が認められ, さらに下位葉では上位葉におけるより出現日が遅れた。5. N. glutinosaの第7葉にGNVを接種し, 接種66時間後にLLが出現し始める条件下においては, 接種72時間後には接種葉からGNVはその葉柄にすでに移行しており, その移行したウイルスのみによってTNをひき起こし, さらにSNとなって植物を枯死させることが, 接種葉切断実験で明らかとなった。すなわちTNの出現および拡大は, 接種後の初期の1時期に到達したウイルスのみで十分であり, それらが頂葉部で増殖・拡大するものと考えられる。6. N. glutinosaの第7葉にGNVを接種し, えそ斑発現の前段階の状態にある接種4日後の+1葉, および頂葉部に広くえそ斑が拡大した7日後における+1葉からGNVを回収した結果, 接種4日後には非常に低濃度で, また7日後にはかなり高濃度でこの+1葉中にウイルスが存在することが確かめられた。7. 以上の結果から次のことが結論される。1) GNVがN. glutinosaにおいてLL⟶TN⟶SNをひき起こす機構は, TMVがN. rusticaにおいて示す現象と同じタイプに属する。2) 接種時に未展開であった第1葉はTNになりにくい。3) LL形成初期にウイルスは既に葉柄に移行しており, そのウイルス量のみでTNおよびSNをひき起こすことができる。4) TNの最初に現われる葉と接種葉との葉序的関係は無視できないが, すべての場合にそれを関連づけることは困難である。
- 神戸大学の論文
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