障害理解教育の授業分析の課題と方法 : 小学校第2学年の授業実践を通して
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究では, 冨永・小川が内容を構想し, 小川が実施したM市立M小学校第2学年における障害理解教育の授業を取り上げ, 分析を加えるとともに, 入り込みの授業を受けている知的に障害のある児童の学びも併せて検証していった。授業構成上重要な局面を「授業局面」として捉え, 各授業局面を起点としながら, 各授業構成要素(目標, 教材, 子ども(集団), 教師(集団), 環境)の関連を局面の中で分析するとともに, 他の授業局面の授業構成要素との関連も併せて分析していった。その結果は, 以下の通りであった。(1)この授業分析方法の有効性が示された。(2)第2学年の児童と知的障害のある児童の障害理解の授業を展開する上で, ゲーム的要素を加えることの有効性が示された, (3)様々な障害のある児童との関わりを印象的な場面を通して理解させることの意義が示された, (4)児童の発言の変化から, 授業方法上の課題, 新たな教材設定の課題が示された, (5)授業の目標自体に, 各班の発表の仕方の評価を加える課題が示された, (6)児童の発言を踏まえた集団思考に対する配慮についての課題が示された, (7)低学年の障害理解の授業の教材として, 「視覚的に気づく障害」を中心にかかわり方を学ぶという一つの方向性が導き出された。情緒の障害, 知的障害を取り上げる場合は, より一層の教材の工夫が求められた, (8)知的障害のある児童にもわかる授業の組織化が, 他の児童のわかる授業の組織化につながるという観点からの, 教材設定, 授業展開の改善が求められた, (9)児童自身が自己の理解度を評価し, 児童相互に理解度を確かめ合う活動を組織化する課題が示された。In this paper we analyzed the teaching-learning process for understanding disabled children at “M Elementary School”, which Tominaga and Ogawa had planed and Ogawa had practiced. The analysis method was to understand an important phase of teaching-learning process structure as “teaching-learning process phase” and to analyze the relation between the elements of teaching-learning process (instructional aim, teaching material, child (group), teacher (group), environment) in each “teaching-learning process phase” and to analyze the relation between the elements of one “teaching-learning process phase” and the elements of the other phase. The following results were obtained.: 1) Our analysis method was effective. 2) The game element was effective for the development of teaching-learning process that the second-year children and the child with intellectual disability understood various disabled children. 3) Understanding the relationships between various disabled children and the other normal children by impressive situations was important. 4) There were issues to improve teaching method and to alter teaching material setting by looking over the change of children responses. 5) There were issues of setting the evaluation of the way to express each opinion in instructional aims. 6) There were issues to consider group thinking on the basis of children responses. 7) There was a course to learn mainly the relationships between visually recognized children with disability and the other normal children in this teaching-learning process of the lower grade at elementary school. The improvement of teaching material was required in the case of learning the relationships between children with emotional disturbance, children with intellectual disability and the other normal children. 8) The improvement of teaching material setting and teaching process was required from the standpoint that the organization of teaching-learning process understood by all children was influenced by the organization of teaching-learning process understood by the child with intellectual disability. 9) There were issues to organize the activities that children evaluated the degree of understanding by themselves and children recognized mutually each degree of understanding.
- 大阪教育大学の論文
著者
関連論文
- ハインリッヒ・ハンゼルマンと設立期のチューリッヒ治療教育セミナーの相関 : ハインリッヒ・ハンゼルマンの治療教育教員養成思想をめぐって
- 高等学校における養護学校の分校・分教室設備による位置的統合に関する研究 : 全国47都道府県教育委員会への質問紙調査を通して
- 教職入門セミナー(特別支援教育教員養成課程)の実施状況について(第2報)
- 知的障害養護学校高等部における造形表現活動の授業分析III : 総合的質的授業分析から新たな授業計画へ (2)
- ドイツの促進学校における学校犬の活用
- ハインリッヒ・ハンゼルマンとアルビスブルーン田園教育舎の相関 : ハインリッヒ・ハンゼルマンにおける治療教育実践と思想をめぐって
- 教職入門セミナー(特別支援教育教員養成課程の実施状況について)
- 知的障害養護学校中等部における「総合的な学習の時間」の授業分析II : 総合的質的授業分析から新たな授業計画へ
- 個別の指導計画の作成と活用に関する研究 : 大阪府盲・聾・養護学校教員免許法認定講習 (養護学校教諭) 受講者への質問紙調査を通して
- 全国病弱養護学校小学部・中学部・高等部における病気の理解教育に関する研究 -全国病弱養護学校調査の分析を通して-
- 障害理解教育の授業分析の課題と方法 : 小学校第2学年の授業実践を通して
- 大阪教育大学における障害学生受け入れの課題
- 質問紙調査の分析による障害理解教育の現状と課題
- スイス史とハインリッヒ・ハンゼルマンの足跡
- 障害学生の講義保障に関する研究
- スイス障害児教育研究のパースペクティブ
- ドイツ語圏におけるハインリッヒ・ハンゼルマン研究の特色(1) : 学的立場による解釈の差異を考慮して
- 10 高等教育機関で学ぶ障害を有する学生に対する学習及び心理的支援について(自主シンポジウム)
- 近畿2府4県における知的障害養護学校中学部・高等部の「総合的な学習の時間」に関する研究
- 知的障害高等特別支援学校における環境教育に関する研究 : 全国高等特別支援学校への質問紙調査を通して
- 知的障害養護学校中学部における「総合的な学習の時間」の授業分析I : 総合的質的授業分析から新たな授業計画へ
- 知的障害養護学校高等部における造形表現活動の授業分析
- ドイツにおける病弱教育の現状と課題 (特集1 病気をもつ子どもへの教育)
- 高等学校における特別支援学校分校・分教室等設置に関する研究 : 全国都道府県教育委員会調査を通して
- 新時代の特別支援教育に対応する教員養成システムの研究(1)本学における特別支援教育科目の教員養成課程必修化の意義と課題(第1報)
- ドイツにおける知的障害児の環境教育の現状と課題--持続可能な開発のための教育(ESD)の視座を問い直すために