動機づけにおける教育心理学的概念に関する教育実践事例の適切性について
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概要
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本研究では,現職教員を対象に行った金子ら(2010)の調査から得られた学校心理学の動機づけ概念に関連づけて理解されうる教育実践場面での事例をもとに,活動領域,対象児童また理論的観点などから典型的なものをいくつかとりあげ,そのような事例が教育心理学的概念によって適切に理解されるものか,また教育実践現場でよくみられるという意味で,実践的適切性をもつものかについて調査することとした。学習性無力感5事例,内発的動機づけ6事例を用意し,現職教員150名を対象に適切性の評価とともに,事例についての自由記述を求めた。内発的動機づけにおける外的な報酬ないし罰のみによる事例を別とすれば,学習性無力感の事例よりも内発的動づけの事例でより適切であると評価された。学校心理学用語の理解度の高い被調査者や教職経験の長い被調査者では,学習性無力感というひとつの理論だけではなく,発達障害,信頼感,目標,生活体験あるいは自己決定等さまざまな視点から理解する可能性が示され,理論的視点を具体的な事例を通して統合する可能性が示唆された。内発的動機づけの事例における,外的報酬ないし罰のみの事例は,その概念的適切性が低く評価された。こうした事例は基本的にオペラント条件づけの原理で理解されるという視点も提供され,条件づけと学習性無力感理論や自己決定理論の関連を再考する必要性も示唆された。
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