L-アミノ酸の合成に関する研究(第2報) : L-グルタミン酸よりL-プロリンの合成(2)
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概要
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前報に引続いてL-グルタミン酸-γ-エステルのナトリウムボロヒドリドでの還元によるL-プロリンの生成機構について検討して次の結果を得た. (1) L-グルタミン酸-γ-エステルよりの本反応によるL-プロリンの生成は, i) 2-ピロリドン-5-カルボン酸, ii) グルタミン酸-γ-セミアルデヒド及びΔ1-ピロリン-5-カルボン酸, iii) α-アミノ-δ-ヒドロキシバレリアン酸のいずれかを経て起るものと考えこの三反応について実験検討を行った. (2) 2-ピロリドン-5-カルボン酸のナトリウムボロヒドリドによる還元は反応が全く進行せずi)の経路は否定される. (3) α-アミノ-δ-ヒドロキシバレリアン酸は塩酸酸性で加熱すればプロリンとなるが,グルタミン酸エステルの還元の諸条件下ではプロリンは生成せず, α-アミノ-δ-ヒドロキシバレリアン酸を経てのプロリンへの経路iii)も否定し得る. (4) グルタミン酸-γ-セミアルデヒドは容易に閉環してΔ1-ピロリン-5-カルボン酸となり,又Δ1-ビワリン-5-カルボン酸の接触還元はプロリンを与えることも知られているので,反応経路ii)の可能性は非常に強いが,事実グルタミン酸-γ-セミアルデヒドを経て合成されたΔ1-ピロリン-5-カルボン酸をナトリウムボロヒドリドで還元することによリブロリンの生成することが認められた. 以上の如くグルタミン酸-γ-エステルのナトリウムボロヒドリドでの還元によるプロリンの生成の機構はエステルが還元され,グルタミン酸-γ-セミアルデヒドとなり閉環してΔ1-ピロリン-5-カルボン酸を生じ,再び還元されてプロリンを与えると考えられる.この反応機構はプロリンの生合成機構に類似している点興味があるのみでなく,今後種々の含窒素異項環状化合物の合成に応用し得ると考えられる.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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