アミノ酸の光学活性に関する酵素的研究(第4報) : 乳酸菌の生産するアミノ酸ラセマーゼ
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
(1) 乳酸菌15株についてD-グルタミン酸よりL-グルタミン酸の生成を検索した所L. fermenti ATCC 9338をはじめとして比較的多くの菌株にその活性を認めた.このL. fermentiの示す菌体mg相当のグルタミン酸ラセミ化活性はすでにWoodやAyengerにより報告されているL. arabinosusのそれよりはるかに強く,この菌株についてグルタミン酸を中心としたアミノ酸のラセミ化反応について検討した. (2) L. fermentiより得られる粗酵素試料のグルタミン酸ラセミ化反応は加熱変性した試料では起らず,明かに酵素反応である.酵素反応最適pHは7.5,反応温度は42°が最適である. Q10は32〜42°で1.68, 37〜47°で1.53であった.この反応はD, Lいずれのグルタミン酸からも同じ速度で起り,全グルタミン酸量に変化はない.反応平衡恒数は基質或は酵素濃度に無関係に1で,この反応は一次反応である.以上の諸点よりこの反応はアラニンラセマーゼとトランスアミナーゼの共同作用によるグルタミン酸のラセミ化ではなく,他の酵素反応と考えられる.この点は更にこの反応に対するピルビン酸やα-ケトグルタール酸の影響のない事でも示される. (3) 更にこのL. fermentiの粗酵素試料はグルタミン酸以外にアラニン,メチオニン,バリン,イソロイシン,フェニルアラニン,アスパラギン酸等未報告のアミノ酸をもラセミ化する事が示され,又これ等アミノ酸のラセミ化もピルビン酸やα-ケトグルタール酸の影響を殆んど受けず,アラニンラセマーゼ或はグルタミン酸ラセマーゼとトランスアミナーゼとの共同反応とは考えられない. (4) ピリドキサール燐酸の補酵素としての要求性その他よりグルタミン酸ラセマーゼ及びアミノ酸ラセマーゼとは全く別の酵素であることが予想され,この菌のラセマーゼは大きく三群に大別出来るように思える.即ちアラニンラセマーゼ,グルタミン酸ラセマーゼ及びモノアミノモノカルボン酸ラセマーゼとも言うべき酵素若しくは酵素系の三群が考えられる.
著者
関連論文
- クロラムフエニコール親水性高分子化合物共沈物の溶解性と消化管吸収
- アミノ酸の光学活性に関する酵素的研究(第9報) : グルタミン酸ラセマーゼを利用したDL-グルタミン酸の光学活性化
- L-アミノ酸の合成に関する研究(第2報) : L-グルタミン酸よりL-プロリンの合成(2)
- アミノ酸の光学活性に関する酵素的研究(第3報) : 細菌によるグルタミン酸のラセミ化
- Caeruleinの腸管運動に対する作用
- アミノ酸の光学活性に関する酵素学的研究(第10報) : グルタミン酸生産菌のアシラーゼ活性について
- アミノ酸の光学活性に関する酵素的研究(第4報) : 乳酸菌の生産するアミノ酸ラセマーゼ
- アミノ酸の比色定量に関する研究
- アミノ酸の光学活性に関する酵素的研究(第5報) : グルタミン酸ラセマーゼ阻害について
- アミノ酸の光学活性に関する酵素的研究(第6報) : グルタミン酸ラセマーゼによるラセミ反応について
- L-アミノ酸の合成に関する研究-4-L-チロシンからL-フェニルアラニンの合成
- フラビン存在下におけるピリドキシン-5'-りん酸およびピリドキシン-4',5'-環状りん酸エステルの光酸化について (ピリドキサール・りん酸の生産に関する研究-1,2-)