トマトの生育ならびに開花•結実に関する研究 (第1報) : 育苗期の温度が生育ならびに開花•結実に及ぼす影響
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概要
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トマトの生育ならびに花芽の分化•発育に対する育苗中の環境条件として温度の影響を調査した。1. 昼温と夜温の影響 昼温は24°と30°C, 夜温は17°, 24°および30°Cとしてそれぞれの組み合わせ6区を設けた。昼温は30°C区の方が苗の発育が速やかで, 花芽の分化が早く, 発育も早い。昼温24°C区では強剛な発育を示し, 着花数が多い。夜温は高いほど生体重/草丈の小さい軟弱な生育を示し, 花芽の分化は著しく遅れ, 花芽の着生節位が上がり, 着花数も少なく, その後の発育•開花•収穫も遅れ, 収量も少ない。昼温と夜温を組み合わせて苗の発育•花芽の分化•発育および収量などとの関係を総合的にみた場合, 昼温24°C: 夜温17°C区が最も良い。2. 生育時期別にみた温度の影響 各花房ごとに, それに影響を与える温度処理は育苗期の何時の時期に施せば効果を現わすかを調べた。第1花房の着生節位の低下には子葉展開後最少2週間低夜温 (17°C) を継続することが必要である。第1花房の着花数の増加には子葉展開から3週間の低夜温が必要であり, 第2花房に対しては5週間, 第3花房に対しては7週間の低夜温が必要である。花芽の形態的分化を顕微鏡下で観察した結果とよく符合する。実際の育苗にあてはめて考えると, 子葉展開後1〜2週間位は比較的高温として発育を促進し, その後昼温24〜25°C, 夜間は比較的低温 (17°C位) に保つことが生育ならびに花芽の分化に最も適し, 成熟が早く, 収量が多い。3. 花芽分化と苗の発育および積算温度との関連 苗の発育と花芽分化との関係をみると, 茎の直径が2.4mmから2.8mmの範囲で第1花房が分化しており, 茎の太さで現わされる苗の発育度と花芽の分化はある程度関連しているように認められる。しかし, どんな条件下でも茎の太さがこの範囲内の時に花芽が分化するものではない。花芽分化と積算温度との関係をみると, 花芽分化は積算温度と関連して定まるものとはいえない。4. 花芽形成と体内成分との連関 昼温と夜温を種々に組み合わせて育苗した場合の花芽の形成と苗の体内成分 (窒素, 炭水化物含量) との関係をみると, 花芽の分化が早く起こり, 分化数を多くした低夜温処理区では炭水化物特に全糖が多く, 窒素特に蛋白態窒素が多くなつている。即ち, 苗が充実し, 生体重/草丈が大きく, 強剛な発育を示す場合には, 全糖と蛋白態窒素とが共に多く, そのような場合に花芽の分化が早く起こり, 分化数が多く, 発育もよいことが見られた。
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