トマトの生育ならびに開花•結実に関する研究 (第5報) : 生育ならびに花芽形成に対する子葉, 未熟葉および成熟葉の役割
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概要
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トマトの葉の花芽形成bull;発育に対する作用を解明するため種々の部位の葉 (子葉•未熟葉•成熟葉) を摘除した場合に起こる変化を調べ, それぞれの葉のはたす役割を確かめようと試みた。1. 子葉の役割 子葉展開直後に(i)子葉2枚のうちの1枚を, (ii) 1枚とさらに他方の半分を, (iii)2枚全部を摘除するものの3区を設けた。子葉の摘除面積の大きいほど苗の生育は抑えられ, 花芽の分化が遅れ, 着花節位が上昇した。着花数, 花芽の発育はほとんど変らなかつた。子葉2枚全部を (i) 子葉展開直後, (ii) 子葉展開5日後, (iii) 10日後, (iv) 15日後, (v) 20日後, (vi) 25日後にそれぞれ摘除した。子葉展開直後に摘除した場合に最も生育が抑えられ, 花芽の分化が遅れ, 着花節位が上昇し, 摘除時期の遅れるのに伴つてしだいにその影響は弱くなり, 20日以後に摘除した場合にはその影響はほとんど認められなかつた。2. 成熟葉の役割 本葉が完全に展開するに伴つて第1節葉から順次摘除し, (i) 2枚, (ii) 4枚, (iii) 6枚を摘除した。成熟葉を摘除することによつて苗の生育は抑えられた。花芽の分化は, 第1花房はほとんど影響されないが, 第2, 第3と上位花房になるにつれて成熟葉摘除数の多いほど順次遅れた。着花節位, 着花数はほとんど変らなかつたが, 花芽の発育は摘除葉数の多いほど順次遅れた。3. 未熟葉の役割 本葉を未展開のごく小さいうちに第1節葉, 第2節葉, 第3節葉および第5節葉から摘除し始め, 上節位に順次発生しだいごく小さいうちに生長点近くまで摘除し続けた。未熟葉摘除を早くから始めた区ほど苗の生育は抑えられたが, 着花数は増加し, 花芽の発育が促進された。花芽の分化期および着花節位はほとんど変らなかつた。4. 子葉と本葉との連関 子葉展開直後に子葉を1枚および2枚摘除し, さらに本葉が展開ししだい, 第1節葉から2, 4, 6および8枚摘除した。子葉と本葉の摘除数の多いほど苗の生育が抑えられ, 花芽の分化は遅れ, 着花節位が上昇し, 着花数が減少し, 花芽の発育が抑えられた。子葉を展開直後に2枚摘除し, さらに本葉を葉長が0.5cm, 2.0cmおよび5.0cmに達した時にそれぞれ摘除し, 第1節葉から第8節葉までを摘除した。いずれの時期の摘葉処理によつても苗の生育は抑えられ, 花芽の分化が遅れ, 着花節位が上昇し, 着花数が減少し, 花芽の発育が抑えられた。とくに葉長2.0cm時に摘除した場合に花芽の分化が最も遅れた。子葉が存在すれば第1花房の花芽形成に対して本葉の影響はまつたく認められず, 子葉は初期生育ならびに第1花房あるいは第2花房までの花芽形成に関与し, 第1花房の花芽形成は子葉のみによつて起こりうるものである。本葉は子葉が存在する場合には第2あるいは第3花房以上の上位花房の花芽形成に関与し, これらの花芽形成は本葉からの物質供給によつて起こるものと考えられる。子葉を2枚摘除してさらに本葉を摘除すると, 花芽形成はまつたく抑えられて栄養生長を続け, 本葉の摘除を中止すると始めて花芽の形成が起こり, 第8節葉まで摘除した場合には分化期は42日も遅れ, 着花節位は8節も上昇した。子葉がない場合には本葉からの物質供給によつて始めて花芽が形成されるものと考えられる。5. 葉の生理的機能 未熟葉は Auxin や Gibberellin を生成して花芽形成に対して抑制作用をもたらし, 子葉および成熟葉は花芽形成に関与する花成物質を生成して花芽形成を促進するものと考えられる。花芽形成に関与する物質の生成量が多く, 若い組織の Auxin や Gibberellin の量がより少ない場合に, 分裂組織における花成物質の集積量が増加して, 花芽形成が最も助長されるものと考えられる。
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