鉄およびアルミニウムのエリオクロムシアニンR錯体と第4級アンモニウム塩の相互作用
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概要
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おもに,ミセル形成臨界濃度(cmc)付近の塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTMAC)の水溶液中における鉄-エリオクロムシアニンR(ECR)錯体およびアルミニウム-ECR錯体の挙動について検討した.鉄およびアルミニウム錯体はcmcより低い7.5×10<SUP>-6</SUP>〜1.5×10<SUP>-5</SUP><I>M</I>程度のCTMAC溶液においても鋭敏に反応し,ミセル溶液におけると同様吸収極大の長波長側への移動,吸光度の増加,ECRの結合比の増加が認められる.生成する錯体の組成はそれぞれ[Fe(ECR)<SUB>3</SUB>(CTMAC)<SUB>3</SUB>],[Al(ECR)<SUB>3</SUB>(CTMAC)<SUB>3</SUB>]と推定される.<BR>また鉄-クロムアズロールS(CAS)およびアルミニウム-CAS錯体はcmc付近のCTMACの存在によって沈殿を生成するが,この沈殿は非イオン界面活性剤のポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルのミセル溶液によって可溶化され,CTMACのミセル溶液におけると同様の吸収曲線を示す.<BR>これらの事実から,トリフェニルメタン系およびスルホフタレイン系配位子が第4級アンモニウム塩のミセル溶液で金属と鋭敏に反応して水溶性錯体を生成する反応は,基本的には配位子結合比の高い金属-配位子-第4級アンモニウム塩の3元錯体が生成し,これが第4級アンモニウム塩のミセル表面において可溶化されているものと考えられる.<BR>以上の検討によって次のことが明らかになった.<BR>(1) ECRはCTMACのミセル溶液で酸解離が促進される.<BR>(2) 鉄およびアルミニウムのECR錯体はミセル形成臨界濃度より低い1.5×10<SUP>-5</SUP><I>M</I>程度のCTMAC溶液においてもミセル溶液におけると同様高次錯体を生成し,その組成は[Fe(ECR)<SUB>3</SUB>(CTMAC)<SUB>3</SUB>],[Al(ECR)<SUB>3</SUB>-(CTMAC)<SUB>3</SUB>]と推定される.<BR>(3) 負電荷をもつ金属錯体と第4級アンモニウム塩が会合する反応は第4級アンモニウム塩のミセル形成と類似したところがあり,ミセルを形成する第4級アンモニウム塩は金属錯体とも会合しやすい.その場合互いに相反する電荷であるためその会合はミセル形成に先行することもありうる.<BR>(4) 低濃度のCTMAC溶液における鉄およびアルミニウムのCAS錯体の沈殿は非イオン界面活性剤のミセル溶液で可溶化され,CTMACのミセル溶液におけると同様の吸収曲線を示す.<BR>(4) 第4級アンモニウム塩のミセル溶液において生成する,金属とスルホフタレィン系およびトリフェニルメタン系配位子との水溶性錯体は,基本的には金属-配位子-第4級アンモニウム塩の3元錯体がミセルによって可溶化されたものであると考えられる.
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