高齢者施設における身体拘束廃止の取組みと事故に関する研究
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概要
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介護保険導入後,高齢者施設では身体拘束廃止に向けて取組みを進めてきているが,その取組みと廃止後の変化に関しては十分に検討されていないと考えられる。そこで,A県内の高齢者施設を対象に,身体拘束廃止の現状と廃止後の変化に関する質問紙調査を行った。回収率は52%であったが,全施設で拘束廃止に取り組んでおり,「全面廃止」が33%,「部分廃止」が16%,「必要に応じて廃止」が41%であった。拘束廃止への準備として60%以上の施設が「定期的なカンファレンスの実施」「外部の研修会参加」を実施していた。拘束廃止時には,「家族・利用者への説明」を80%以上の施設で行っていた。身体拘束廃止後,多くの施設でスタッフ間の高齢者の情報の共有,高齢者の良い変化など肯定的な変化がみられた。身体拘束廃止前後で事故数の大きな変化はみられなかった。身体拘束廃止取組み後の事故内容は回答率が低かったが,転倒・転落の占める割合が回答数の約65%であった。転倒,転落,点滴チューブの抜去等の事故内容は施設の特性で異なっていた。以上のことから,身体拘束を全面廃止することは困難であるが,廃止に取り組むことで利用者,家族およびスタッフに肯定的な変化が得られており,廃止取組前後で事故数の大きな変化はみられていないことから,身体拘束廃止の継続的推進と施設特性に応じた事故防止対策の必要性が示唆された。Since the care insurance was introduced, homes for the aged have been dealing with abolishment of physical restraint. However, there have been few studies on their efforts and changes that have taken place at such institutions. Thus a questionnaire survey was conducted at homes for the aged in a certain prefecture in Japan, in regards to the current situations of the abolishment and its consequent changes after the abolishment. All the institutions that responded were implementing the abolishment: “complete abolishment”, “partial abolishment”, “abolishment in accordance with necessity” are 33%,16% and 41%. In preparation for the abolishment, over 60% had carried out “regular conferences” and participated in “outside seminars.” At the time of abolishment, more than 80% of the institutions provided “explanations to the users and their families.” After the abolishment, the staff at many institutions became able to exchange more information about the aged, and the conditions of the aged improved. Also, there were no significant changes in the number of accidents after the abolishment. In terms of the accidents after the abolishment, “falling” amounted to about 65%. The exact nature of such accidents differed from institution to institution.In conclusion, despite the challenges and difficulties of introducing the complete implanting the abolishment, positive changes were observed among the users, their families and the staff, and there were no significant changes in the number of accidents after the abolishment. Thus, it is implied that the abolishment should be carried forward. It turned to be necessary to take measures for preventing accidents that are specific to institutions.
- 九州大学医学部保健学科,School of Health Sciences, Faculty of Medicine, Kyushu Universityの論文
- 2005-10-05
著者
-
佐藤 美幸
宇部フロンティア大学人間健康学部
-
佐藤 美幸
山口大学医学部保健学科
-
佐藤 美幸
滋賀医科大学 医学部看護学科
-
澄川 桂子
山口県立大学看護学部
-
中尾 久子
山口大学医学部公衆衛生学講座:九州大学医学部保健学科
-
佐藤 美幸
東京農業大学短期大学部環境緑地学科
-
中尾 久子
九州大学大学院医学研究院
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