高齢者の抑制廃止の取組みに関する研究 : 既に取組んでいる施設の調査を通して

概要

論文の詳細を見る
本研究では高齢者の抑制廃止の取組みについて、既に取組んでいる施設を対象に調査を行った。調査項目は、抑制廃止における組織的な取組みと高齢者・家族への取組み、過去・現在および今後の取組み及び独自のマニュアルの有無を尋ねた。抑制廃止に取組んでいる施設では、取組みの決定には病院長に続いて看護部長の決断が大きな影響を与えていた。過去の組織としての取組みでは、院内での抑制廃止についての研修会、抑制廃止に向けての基本方針やマニュアルの作成が約半数、高齢者や家族への個別的な取組みでは高齢者に対する抑制以外の方法の話合いが全ての病院で行われていた。抑制廃止のデメリットでは、転倒、転落の数の増加、他の高齢者への看護および介護時間の減少、看護・介護職のマンパワー不足がみられたが、抑制廃止のメリットとして、アセスメント能力の向上、個別性を重視した看護、看護者・介護者のやりがい感、高齢者の生活の質の向上もみられた。やむを得ない場合の抑制は、約90%の病院で行われており、現在積極的に取組んでいる病院でも抑制をゼロにするのは難しいと考えていた。人権を守る視点から考えた場合、過度の安全確保を目的とした抑制を高齢者に長期間行うことにより、元に戻らない「抑制死」といわれる変化が起きると考えられている。高齢者の個別性を考慮しつつ、スタッフ間で一貫した対応を検討することで、安易な抑制は廃止できると考えられる。今後、抑制廃止の取組み導入後の高齢者、看護職の意識や行動の変化に関して縦断的研究が課題であると考えられた。

高齢者の抑制廃止の取組みに関する研究 : 既に取組んでいる施設の調査を通して

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク