成層圏大気中の多種の微量成分観測を目的とした気球搭載用大気採取装置の研究
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概要
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本論文は,成層圏大気に含まれる微量成分の分析を目的として,大型科学気球を利用した大気採取装置の開発研究をまとめたものである.開発した装置は,グラブ・サンプリング装置とクライオジェニック・サンプリング装置の2種類である. 前者は超高真空に排気した試料容器に大気を採取するもので,南極のような困難な条件下で利用するため,搭載コンピュータ及びGPSを用いた制御により,小型・軽量・完全自律化を実現した.一方後者は,極低温技術を応用して大気を大量(高度35Kmで20LSTP以上)に固化して採取するもので,諸外国でも行われていないより微量な大気成分の分析及びより高精度な分析をも可能にした.本装置は入手容易な液体Heを利用したもので,世界で唯一稼動しているシステムである.そのために,熱設計手法,採取容器の汚染防止技術,搭載コンピュータによる高信頼制御システムなどを新たに開発した.この装置を評価し,CO_2,CH_4,CFCなどの濃度がそれぞれ0.01ppm,1ppb,数pptの精度で分析可能なこと,長期保存試料の再分析において濃度変動が非常に小さいこと(たとえばCH_4は5ppb以下)を示した.これら2種類の装置の改良を続けながら20年近く運用し,国内外において成層圏大気採取実験を行い,そのほとんどの実験において安定に高品質な大気を採取することに成功した.その結果,高度10kmから35kmにおいて高度別に採取された大気の分析から,成層圏内におけるCO_2濃度の長期変動,CO_2の酸素同位体の濃縮,多種のCFCの高度分布が明らかになり,本装置の有効性が証明された.
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