フィールドワークを評価する : 「フィールドワーク-共生の森もがみ」の3年間の総括
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概要
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はじめに 大学における現地体験型の教育は、これまで、インターンシップ、教育実習等に代表されるような専門教育におけるものが中心であった。そこでは、学生の実践的な知識・技能の育成や職業意識の向上という大学あるいは学生にとってのメリットがあるとともに、優秀な人材の育成という経済社会にとってのメリットがあった。一方で、教養教育における現地体験型の教育は、専門教育におけるそれとは異なる意義があると考えられる。杉原(2008)は、山形大学が教養教育科目として開講している「フィールドワーク-共生の森もがみ」の取組が、大学にとって、学生にとって、そして地域社会にとってどのような意義があるのかについて、聞き取り調査をもとに考察した。本授業は、山形大学が進める大学と地域の連携プロジェクトである「山形大学エリアキャンパスもがみ」の中心的事業である。「フィールドワーク-共生の森」では、地域と大学による相互貢献の関係が成立し、経済的なメリットだけではなく、知的・文化的、さらには人材育成的、人的ネットワーク的なメリットが存在していることがわかった。それは、地域社会と大学が相互貢献の関係において連携することで、地域が経済的・文化的価値を共有・創造する場、金融資本・人的資本・社会資本を育む場として成立する「学習地域(Learning Region)」(OECD,2005)となっていることを意味する。しかし、これらは「フィールドワーク-共生の森もがみ」が開始されて1年後の聞き取り調査の結果である。地域と大学との連携を実質的かつ持続的なものにするためには、より継続的かつ広範囲の調査が必要となる。このような背景により、このたび、「フィールドワーク-共生の森もがみ」が3年間実施された後に、かかわった多くの学生および地域の人々の声を集めるべく、アンケート調査を実施した。本稿は、そこで集められたデータをもとに、教養教育科目としてのフィールドワークが、学生にとって、そして地域社会にとって、どのような意味を持ったのかについて、考察するものである。
- 2010-03-31
著者
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