産地の異なる食用カンナの澱粉の構造と物理化学的性質との関係
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概要
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台湾、ミャンマー、ベトナム、インドネシアのアジア各地で栽培された食用カンナについて、その澱粉の構造と糊化物性との関係を調べた。カンナ澱粉の85℃の熱水中での溶解度はポテト澱粉と同様に高かった。膨潤力はポテト澱粉が64.1g/gであるのに対して、13.7-25.2g/gと低く、ノーマルコーン澱粉に比較的近かった。ベトナム産は食用カンナ澱粉の中では比較的高い膨潤力と低い溶解度を示した。DSC分析において、ポテト澱粉に比べカンナ澱粉の吸熱量は低かったが、糊化ピーク温度はポテト澱粉の63.9℃に比べカンナ澱粉ではいずれも65.8℃以上と高く、その中でも台湾産が最も高い72.0℃の値を示した。これはアミロペクチン結晶部が、より強固な構造であるためと考えられた。食用カンナ澱粉粒のグルコアミラーゼによる消化性はポテト澱粉粒よりも低く、その中でも台湾産が最も低かった。澱粉のアミロース含量はベトナム産およびインドネシア産の2種が高く、特にベトナム産は31.1%とノーマルコーン澱粉よりも高かった。台湾産カンナではアミロースとアミロペクチン側鎖の中間画分が16.5%と他のものと比べ1.5-2.1倍程度高かった。HPAEC-PAD法により、台湾産カンナのアミロペクチン側鎖は重合度23-37の長鎖画分が多いことが認められた。産地の異なるカンナ澱粉は、食品素材として汎用されるポテトおよびノーマルコーン澱粉と異なる物性を示し、またその産地によってもその性質は異なった。各産地での特性を活かすことで食用カンナの新たな食品素材としての可能性が示唆された。
著者
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田中 伸幸
高知県立牧野植物園
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井ノ内 直良
福山大学生命工学部
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中浦 嘉子
福山大学生命工学部
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倉掛 昌裕
福山大学生命工学部応用生物科学科
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倉掛 昌裕
福山大学生命工学部生命栄養科学科
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井ノ内 直良
福山大学生命工学部応用生物科学科
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井ノ内 直良
福山大学生命工学部生命栄養科学科
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