読書教育と文学 : 他者へのまなざし
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概要
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教養教育の基盤としての読書教育が必要になってきている。活字離れ、本離れが嘆かれて久しいが、最近、漫画でさえ活字の入ったものは読まれなくなってきた。大学教育においても、この本離れは深刻な問題を引き起こしている。本が読めないという学生が現れ出したからである。どのような本を、どのように読むかという教育がなされなければならない時代がきたのである。大学における教養教育は、学生が将来、自分が社会のなかでどういう位置にいるか、自分が社会に対してどういうことができるかを理解できる能力を身につけさせることにある。教養のための読書は、教養教育にとって肝要である。読書法にも、各自のこだわりがある。自分なりの読書法をもって、自分の守備範囲を広げ、新しい世界を知ることで自分の世界観が変るような読書体験を重ねることが、教養のための読書の目的である。ここでは、読書教育の一環として、読むのに努力を要する文章を想像力で補いながら読むために、文学を読むということを論じる。固有の体験を言語化した作品を読むことによって、相手の考えていることの要点をつかむという訓練は、読書をとおして常に行われていることであり、相手の言っていることの要点を指し示す行為は、社会性を育む大切なものである。自分の心を知ることで自分と真っ向から向き合い、他者の心の動きを想像することで他者と真摯に向き合うことが、現代の若者には求められている。読書教育とは、こうした他者へのまなざしを育てる最良の方法なのである。
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