漱石文学の源流 : その作家的出発をめぐって
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
漱石は、『文学論』を代表とする独自の文学理論で問題化された課題を、それぞれ特異な文学表現として自身の作品に応用しようとしたと考えることができる。(小森陽一「文学論」「国文学」平六・一) その中で「文学とは何か」という疑問に対して、西洋と東洋という異文化に引き裂かれることで、真実は光芒を放つ。漱石の作品群は、こうした東洋の一人の学者が、西洋という異文化の中で、東洋と西洋の両者における真実なるものをもとめて、その結果生み出されたものなのである。こうした理由から、漱石の文学理論は必然的に創作方法への転化という問題を内包している。明治三十八年一月に発表された「吾輩は猫である」から、大正五年十二月、新聞連載絶筆の「明暗」にいたる漱石の作品群が、こうした文学理論の開花であり、果実であることは確かなことである。そのひとつひとつの作品を読み解くことで、漱石文学の源流は、その作家的出発をめぐる諸問題とともに大きな意味をもつのである。
著者
関連論文
- 国語教育と文学 : ことばと心
- 宮沢賢治『注文の多い料理店』論 : について
- 読書教育と文学 : 他者へのまなざし
- 幽霊という狂気 : 漱石「琴のそら音」
- 森鴎外「舞姫」序論
- 饒舌という狂気 : 漱石『吾輩は猫である』
- 漱石文学の源流 : その作家的出発をめぐって
- 『野分』論 : 実相と影
- 夏目漱石と西田幾多郎における東洋と西洋 : 『行人』と『善の研究』
- 夢の方法 : 漱石『三四郎』論
- 生涯学習としての村上春樹の読書
- 村上春樹『羊をめぐる冒険』論 : との出会い
- 表象の-漱石(人文・社会科学編)
- 芥川龍之介「歯車」論 : 不条理な意識
- 『三四郎』論 : 「迷羊(ストレイシープ)」について
- 西洋近代を超えるもの : 漱石文芸における の諸相 (2)
- 樋口一葉『たけくらべ』論 : の言葉
- 生涯学習としての樋口一葉の音読
- 選び取られた : 漱石文芸におけるの諸相
- 絶対という狂気 : 漱石『行人』
- 生涯学習としての一葉の読書
- 夢幻という狂気 : 漱石『永日小品』
- 生涯学習としての鴎外の読書
- 樋口一葉『にごりえ』論 : という物語
- 生涯学習としての漱石の作品研究
- 『趣味の遺伝』論
- 生涯学習としての漱石の読書
- 『坑夫』論 : 片付かない不安
- 『草枕』論 : 浮遊する魂
- 『草枕』論--浮遊する魂