森鴎外「舞姫」序論
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
「舞姫」は、明治二三年 (一八九〇) 一月「国民之友」第69号付録に掲載された。鴎外二九歳の作である。太田豊太郎の一人称で語られるこの作品は、完成度の高さにおいて、近代文学史において重要な位置をしめている。本稿は、ここに描かれる太田豊太郎の近代知識人としてのありかたについて考えるなかで、その感性を導きだしたエリスの存在について考察する。明治日本の精神においては、異国での結婚を前提とした恋愛、官命への反抗、家の放棄は、倫理に反する重罪であった。たとえば、愛した女性を捨てるよりも、国家や家を捨てることのほうが、罪が深いとされる。明治日本の精神構造のなかでは、個人の精神は、抹殺される。そのなかで、エリスは狂い、太田豊太郎は痛恨の痛みを持続する。近代知識人太田豊太郎が超えようとした近代とは何だったのか。森鴎外「舞姫」について論及する。
著者
関連論文
- 国語教育と文学 : ことばと心
- 宮沢賢治『注文の多い料理店』論 : について
- 読書教育と文学 : 他者へのまなざし
- 幽霊という狂気 : 漱石「琴のそら音」
- 森鴎外「舞姫」序論
- 饒舌という狂気 : 漱石『吾輩は猫である』
- 漱石文学の源流 : その作家的出発をめぐって
- 『野分』論 : 実相と影
- 夏目漱石と西田幾多郎における東洋と西洋 : 『行人』と『善の研究』
- 夢の方法 : 漱石『三四郎』論
- 生涯学習としての村上春樹の読書
- 村上春樹『羊をめぐる冒険』論 : との出会い
- 表象の-漱石(人文・社会科学編)
- 芥川龍之介「歯車」論 : 不条理な意識
- 『三四郎』論 : 「迷羊(ストレイシープ)」について
- 西洋近代を超えるもの : 漱石文芸における の諸相 (2)
- 樋口一葉『たけくらべ』論 : の言葉
- 生涯学習としての樋口一葉の音読
- 選び取られた : 漱石文芸におけるの諸相
- 絶対という狂気 : 漱石『行人』
- 生涯学習としての一葉の読書
- 夢幻という狂気 : 漱石『永日小品』
- 生涯学習としての鴎外の読書
- 樋口一葉『にごりえ』論 : という物語
- 生涯学習としての漱石の作品研究
- 『趣味の遺伝』論
- 生涯学習としての漱石の読書
- 『坑夫』論 : 片付かない不安
- 『草枕』論 : 浮遊する魂
- 『草枕』論--浮遊する魂