数種在来イネ科野草の生態特性と乾物生産 : II.刈取りの時期および回数がミヤコザサ群落の乾物生産に及ぼす影響
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概要
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前報にひきつづいて,ミヤコザサ群落の永続的な放牧利用と抑圧除去のための適期を明らかにする目的で刈取りの時期と回数に関する実験を行った。刈取時期は,原則として月別とし,刈取回数は主要生育期間である6月から9月にそれぞれ0,1,2,3,4回の刈取りをする5処理区を設けた。両実験とも翌年の再生地上部および地下部現存量,LAI,稈数,冬芽数について調査し,次の結果を得た。(1)月別に刈取った区の地上部現存量は,いずれも無刈取区に比べて大巾な減少(約60%以下)を示した。一般に夏期の刈取りは秋から翌春までの期間の刈取りに比べて相対的に少なく,特に8月刈区では顕著な減少を示した。(2)地下部現存量,LAI,稈数に及ぼす月別刈取りの影響は地上部現存量とほぼ同じ傾向を示し,夏期,特に8月の刈取りでいずれも低い値を示した。(3)地上部および地下部現存量,稈数は刈取回数によっても影響され,刈取回数が増加するほど減少する傾向を示した。(4)刈取りの時期や回数による地上部現存量の変動は,主として稈数の変動に依存するところが大きかった。(5)翌年の稈数に影響する冬芽は9月から10月に形成されるが,8月刈区の場合はその他の月の刈取区に比べて冬芽の形成が特異的に少なかった。(6)(2)および(5)から,8月刈区の地上部現存量が顕著に少なくなる原因は地下部現存量と冬芽形成の著減によるものと考えられる。以上の結果を基礎にすると,ミヤコザサ群落のより永続的な放牧利用のための適期は11月から4月までの期間であり,群落抑圧のための適期は8月であると結論される。
- 日本草地学会の論文
- 1979-07-31
著者
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