牧草の乾物生産 : 第12報わが国各地域のオーチャードグラスの季節生産性におよぼす気温と日射量の影響

概要

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本報では,前報,第11報で得られた結果を基礎にして,わが国各地域におけるオーチャードグラスの季節生産性を主に,気温と日射量との関連で検討した。1.各地域における気温と日射量の季節的変化は,緯度,標高との関連で種々に異なるようであった。気温の変化は,全国的に8月を頂点とする単頂曲線を示したが,日射量の変化は地域により異なり,高緯度の北海道地方や東北地方,また,高標高地方では,5月〜6月に頂点を持つ単頂曲線を示したのに対し,東北地方以南の低緯度地方では,4月と8月に頂点を持つ双曲線を示した。2.計算値における1年間の合計乾物生産量は,西南暖地において高い値が示されたが,乾物生産効率(CGR,日射量の生産効率)は,この地方では低く,高緯度地方(北海道西南部,東北地方)と高標高地方(中部高原地帯)において,高い値が得られた。これらの地方では,オーチャードグラスの生育適温期(16℃,第11報参照)と1年間の中で最も日射量が高くなる時期が重なる(5月〜6月)ので生産効率が高まり,しかも,夏期が比較的冷涼なため,1年間の乾物生産効率は高くなった。北海道東北部においては,生産効率と乾物生産量の両者が低い状態であった。この地域では,1年間の中で最も日射量が高くなる時期(5月)は,低温条件にあること,また,生育適温期(8月)には,日射量が低下する傾向にあることにより,1年間の生産効率は低く,また,寒冷地帯であるため生育期間が短く,しかも,比較的低温状態にあることにより1年間の乾物生産量も低い段階にとどまった。西南暖地では,生育期間が長く,日射量も高いため,1年間の乾物生産量は増加したが,夏期が高温状態であるため,生産効率が低下する期間が長くなり,1年間の生産効率は低下した。3.CGRの季節的変化は,北海道東北部では,8月,北海道南西部と中部高原地帯では,6月に頂点を持つ単頂曲線を示したが,東北地方以南の低緯度地域では,春と秋に頂点を持っ双頂曲線を示した。
日本草地学会の論文
1973-10-25

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