牧草の乾物生産 : 第10報土壌水分条件を異にしたオーチャードグラス草地の乾物生産量の推定

概要

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土壌水分を異にした場合のオーチャードグラス草地の乾物生産量のちがいを明らかにするために,第7報でおこなった群落実験と本報のポット実験の結果を基礎に乾物生産式とCGR式を使って検討した。得られた結果の大要は次のようである。1)個葉の光合成速度は,土壌水分によって異なり,その最大値は70%区でみられたが,45%〜70%区の範囲ではそれほど大きな差異はなく,これより多湿あるいは乾燥条件になるほど低下する傾向を示した。呼吸速度についても同様の傾向がみとめられたが,光合成速度に比べて多湿や乾燥条件下での低下率が小さかった(第2図)。2)土壌水分を異にする場合の葉面積生産は,45%〜70%区で最大値を示し,それよりも多湿あるいは乾燥区で小さくなる傾向を示した。同様の傾向は葉面積生産に関係する葉数,茎数,葉の大きさでもみとめられた(第2図,第2表)。3)第7報と1),2)の結果を基礎に乾物生産式,CGR式から求めた刈取後の乾物重の増加速度とCGRは,ともに45%〜70%区で大きく,それよりも多湿や乾燥になるほど,小さくなる傾向を示した(第3,4図)。またCGRが最大値をとる時期は45%〜70%区で早く,それより遠ざかるほどおそくなる傾向を示した(第4図)。4)純生産量を基礎に算出した土壌水分による生産量指数(第4表)は,45%〜70%区(pF2.7〜1.5)で最も大きく,35%(pF4.0)よりも乾燥した場合あるいは90%(pFO.5)より過湿になった場合は45〜70%区の50%以下に低下することが明らかとなった。このことからオーチャードグラス草地の土壌水分率は最大容水量の45%〜70%が適湿の範囲と考えられる。
日本草地学会の論文
1973-10-25

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