日長時間・気温・日射量およびこれらの要因の相互作用が主たる寒地型牧草の生育におよぼす影響
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概要
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気象要因(日長時間,気温,日射量)およびこれらの要因の相互作用が寒地型牧草4草種(オーチャードグラス,チモシー,トールフェスクおよびペレニアルライグラス)の乾物生産におよぼす影響を草種間比較の視点から検討した。また,4草種の中では,最も気象反応が鋭敏であったチモシーについて,日長反応の品種間差を検討した。主たる結果を以下にのべる。1.各乾物生産要因の気象条件(気温,日長時間,日射量を組み合わせた条件)に対する反応(一般気象反応性)をFINLAY & WILKINSONの回帰解析法によって検討した(第1図)。T/R比の一般気象反応性は,Ti(チモシー)=Pr(ペレニアルライグラス)>Or(オーチャードグラス)=Tf(トールフェスク)であり,チモシーとペレニアルライグラスにおいて顕著に示された。他の乾物生産要因の一般気象反応性は,草丈では,Ti=Or>Pr=Or=Tf,茎数では,Pr>Ti=Or=Tf,SLAでは,Ti>Pr=Or=Tf,個葉の光合成速度では,Ti=Pr>Or>Tfであった。また,個体の乾物重の反応は,4草種ともほぼ同一の傾向にあった。全般的にみて,4草種の中では,チモシーとペレニアルライグラスの一般気象反応性が大きく,次いで,オーチャードグラスであり,トールフェスクは最も小さかった。2.4草種の各乾物生産要因の一般気象反応性の差異が単一の気象要因の支配(単独要因効果)によるか,あるいは,気象要因間の相互作用(相互作用効果)によるかを解析した(第2図)。日長時間に対する反応は,チモシーで大きく,トールフェスクで小さかった。乾物生産要因の中では,4草種とも,茎数が日長時間の単独効果あるいは日長時間と他の気象要因(日射量,気温)との相互作用効果を強く受けることが示された。日射量に対する反応傾向には,4草種間で大きな差異が示されなかった。気温に対する反応は,チモシーにおいて若干強く示された。一般気象反応性は,チモシーとペレニアルライドグラスの2草種において顕著に示された。チモシーの一般気象反応性が大きかったのは,主に,日長時間に対する反応が大きかったことに起因するのに対して,ペレニアルライグラスでは,3気象要因に均等に反応した相加効果に起因して,一般気象反応性が強く示されたものと判断された。3.各草種の気象反応特性を比較した結果,チモシーのような気象反応特性を持つ草種は,高緯度地帯,越冬条件が厳しい地帯に適する草種であり,ペレニアルライグラスは,おだやかな気象条件下(気象の季節的変化が少ない条件下)で効率的な生産を示す気象反応特性を持つ草種であることが裏付けられた。トールフェスクは,日長反応が鈍い草種であるので,高緯度から低緯度まで広い範囲に適する可能性があることが示された。オーチャードグラスは,チモシーとペレニアルライグラスの適地の中間的な気象条件の地帯に適する草種であると考えられた。4.チモシーのT/R比の日長反応には,品種間でかなり大きな差異が示された(第3図)。T/R比は,長日(18時間)条件下で増加する傾向を示したが,その増加率は,12時間日長条件下で,低いT/R比を示した品種において顕著であった。
- 1978-01-31
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