異なる劣性Wx遺伝子をもつコムギ品種のアミロース含量の変異
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イネ科穀類の胚乳デンプンの特性は、構成成分であるアミロースとアミロペクチンの比率によって大きく変化する。6倍体コムギでは三つのWx座(Wx-A1、Wx-B1、Wx-D1)がコードするWxタンパク質がアミロース合成を司っている。Wx遺伝子のアミロース合成能力には差異があり、Wx-B1遺伝子の効果が最も大きい。本試験では、それぞれの劣性対立遺伝子がアミロース含量をどの程度低下させるか調査した。劣性対立遺伝子Wx-A1bをもつ関東82号、劣性対立遺伝子Wx-B1bをもつCadoux、Eradu、Gamenya、Hal-berd、Penawawa、劣性対立遺伝子Wx-D1bをもつBai Huo、さらにWx-A1bとWx-B1bをともにもつ関東79号と関東107号を用いた(Table1)。対照品種として3座とも優性対立遺伝子をもっChineseSpring(以下CS)とKulinを加えた。Wx遺伝子型はWxタンパク質の二次元電気泳動パターンから同定した。圃場と人工気象室で栽培、登熟させた種子の胚乳デンプンをオートアナライザーで比色定量しアミロース含量を推定した。供試した11品種には圃場の材料で20.7〜24.9%、人工気象室の材料で19.3%〜25.2%の変異があった(Table2)。環境間の高い相関(r=0.94、P<0.01)から、アミロース含量は遺伝的支配を強く受ける形質であるといえる。関東82号とBai Huoのアミロース含量はCSより1〜2%、Wx-B1座が劣性な5品種は1〜3%低く、系統間の遺伝変異は大部分がWx座の劣性対立遺伝子の違いで説明できた(Table3)。Wx-B1bのアミロース含量を減少させる効果は、Wx-A1b、Wx-D1bに比べ大きかった。しかしWx-B1座が劣性である5品種間の約2%の有意な変異や、CSとKulinのアミロース含量の差異から、遺伝背景の影響やWx座以外の遺伝子効果が示唆された。さらに関東107号と関東79号のアミロース含量は20%程度で最も低く、二重劣性によるアミロース含量の低下が相加的でないことが示された。
- 帯広畜産大学の論文
- 1998-10-26
著者
-
三浦 秀穂
帯広畜産大学
-
三浦 秀穂
帯広畜大
-
渡部 信義
岐阜大学農学部
-
渡部 信義
岐阜大農
-
沢田 壮兵
帯広畜産大学畜産学部
-
荒木 悦子
帯広畜大
-
荒木 悦子
帯広畜産大学作物科学講座
-
三浦 秀徳
帯広畜産大学
-
沢田 壮兵
帯広畜産大学
-
三浦 秀穂
帯広畜産大
関連論文
- 光照射によるジャガイモ塊茎色とクロロフィル量の変化(平成21年度年次講演会一般講演)
- 記念講演会の開催にあたって(談話会会報第50号発刊記念講演)
- 圃場およびガラス室栽培した白粒×白粒コムギ集団の種子休眠性QTLの解析(平成21年度年次講演会一般講演)
- コムギ種子休眠性QTL、QPhs.ocs-3A1の座乗位置の決定(平成21年度年次講演会一般講演)
- 強力粉・薄力粉適性の優れる強種子休眠性白粒コムギ系統の作出に向けて(平成21年度年次講演会一般講演)
- ゼンコウジコムギ由来の白粒コムギの発芽温度反応(平成21年度年次講演会一般講演)
- 「ゆめちから/きたほなみ」由来の半数体倍加系統における赤かび病抵抗性QTL解析(平成21年度年次講演会一般講演)
- 農林61号Wx準同質遺伝子系統をもちいた薄力粉特性評価
- コムギ農林61号W_Xタンパク質準同質遺伝子系統の草姿と原粒形質の変異
- 国産小麦の薄力粉特性の解析
- 強休眠性白粒コムギ系統の地域適応性と発芽温度に対する反応
- コムギ農林61号Wx準同質遺伝子系統の作出と品質特性
- 耐冷性極強イネ系統「上系04501」における穂ばらみ期耐冷性QTLsのマッピング
- 初冬播栽培した硬質春コムギにおけるかんすい添加処理小麦粉の色相
- かんすい添加時における小麦粉色関連形質の相互関係
- コムギ染色体欠失・置換系統におけるグリアジンタンパク質の解析
- 深植え栽培におけるジャガイモの生育特性の解析
- コムギ種子休眠性QTL,QPhs.ocs-3ASと候補遺伝子TmXの精密マッピング
- 穂発芽耐性白粒コムギ系統の開発とそれらの小麦粉および澱粉特性
- ワイルドライス(Zizania Palustris L.)完熟胚からのカルス誘導におよぼす培地と種子令の影響
- 量的形質の表現型変異におよぼす環境効果と遺伝子型と環境との相互作用効果
- 白粒コムギ分離集団における種子休眠性の変異と関与するQTLの検出
- コムギ準同質遺伝子系統による中華麺物件とテクスチャーに対する高分子グルテニンサブユニットの影響の検討
- コムギのWxタンパク質欠失系統から調製した澱粉の諸性質
- コムギの Wx タンパク質欠失系統における小麦粉特性の地域と年次変動
- コムギWxタンパク質欠失系統のデンプン特性の変異
- 異なる劣性Wx遺伝子をもつコムギ品種のアミロース含量の変異
- 赤粒コムギ×白粒コムギ集団における種子休眠性QTLの解析
- ルスチカタバコ種子の発芽速度と発芽斉一性における遺伝子型と環境との相互作用のダイアレル分析
- ルスチカタバコの二面交雑F1における草丈の個体間変異の開花日依存・非依存成分
- ルスチカタバコの量的形質発現における遺伝子型と環境との相互作用のダイアレル分析
- ゼンコウジコムギを用いた強種子休眠性白粒系統の開発
- 白粒コムギ戻し交雑集団における種子休眠性の向上
- 自粒コムギ組換え自殖系統における種子休眠性の変異
- 染色体欠失系統を用いたコムギ5A染色体長腕のQTL分析
- スペルトコムギ(Triticum spelta L.)における穂軸の脆弱性の種内変異
- コムギの耐凍性と春化反応性の関係
- コムギ3A染色体上の種子休眠性と農業形質に作用するQTL
- コムギ3A染色体のABA感受性QTLのマッピング
- 白粒コムギ分離集団における種子休眠性QTL、QPhs-3ASとQPhs-4ALの効果
- コムギ赤かび病および穂発芽に対する亜リン酸液肥の効果
- トレント大学(カナダ)におけるCommunity-based Research(CBR)
- 帯広畜産大学における全学農畜産実習
- 穂発芽耐性小麦の開発
- 「スズヒメ」のもつダイズシストセンチュウレース1抵抗性遺伝子のマッピング
- ダイズシストセンチュウレース1に対する抵抗性遺伝子のマッピング : 1. 親品種のRFLP分析
- コムギのWxタンパク質欠失系統における麺物性の差異
- 小麦色色相に関与する遺伝子の座乗染色体同定
- コムギ品種および染色体置換系統における小麦粉色相と品質関連形質との関係
- 有限伸育性ソバの生育特性におよぼす栽培条件の影響
- トウモロコシ法によるコムギ半数体作出頻度におよぼす5Aおよび5B染色体の影響
- トウモロコシ法によるコムギ半数体植物の効率的作出に向けて
- 低温年におけるダイズ早晩性同質遺伝子系統の正方形植えに対する反応
- コムギ第4同祖群染色体上の種子休眠性に関わる QTL マッピング
- イネゲノムとのシンテニーを利用したコムギの種子休眠性遺伝子の検出
- 春播きコムギ品種BW148の種子休眠性の遺伝分析
- コムギ品種の第5同祖群染色体のRFLP分析
- コムギ種子発芽におけるアブシジン酸感受性に関わる遺伝子の座乗染色体
- コムギ種子休眠性関連遺伝子のマーカー選抜に向けて
- コムギ春化反応性遺伝子Vrn-AlとCKIIα遺伝子との連鎖関係
- 根粒非着生ダイズにおける葉中窒素含量と子実収量の関係
- コムギ種子休眠における種皮と胚の遺伝支配
- コムギの染色体欠失系統を用いた5A染色体長腕の量的遺伝子座分析
- 出穂日に関するコムギ5A染色体の遺伝子分析
- アズキ品種・系統「エリモショウズ」と「十育134号」の開花数、着莢率および結莢率
- コムギ5A染色体の春化反応性遺伝子Vrn1のRFLPマーカーによるマッピング
- コムギ5A染色体におけるRAPDとISSRマーカーの探索
- コムギ品種"Chinese Spring"におけるモチ性変異体の作出
- コムギ3A染色体組換え系統における種子休眠性の差異
- トウモロコシーダイズ間作条件下での雑草抑制
- ワイルドライス幼植物体の生育に及ぼす水深と温度の影響
- ダイズ品種'Harosoy'の正方形植えに対する反応の生長解析
- 早晩性の異なるダイズ同質遺伝子系統の正方形植えに対する反応
- ワイルドライス(Zizania palustris)の発芽における種子浸漬時間および初期生育における水深の影響
- 草型を異にするダイズ系統の正方形植えに対する反応
- ダイズ品種における着莢数のプロット内変異と栽植密度
- 作物の栽植密度と栽植様式(5) : ダイズの葉面積と乾物生産の推移
- 作物の栽植密度と栽植様式(4) : ダイズの混植に対する反応
- ダイズの子実収量に及ぼす分枝切除効果と栽植様式・密度
- 作物の栽植密度と栽植様式 : (3)ダイズの収量関連形質に及ぼす分枝切除の効果
- 作物の栽植密度と栽植様式 : (2)大豆の葉形に関するIsogenic linesの競争
- ダイズ子実収量の栽植様式の違いによる変動
- 栽植様式の違いがダイズの乾物生産に及ぼす影響
- 異なった栽植密度下でのダイズ収量とその構成要素に及ぼす正方形植えの効果
- アメリカマコモ(Zizania palustris L.)種子の発芽に及ぼす浸漬処理ならびに種皮処理の効果
- トウモロコシの複交雑品種「ワセホマレ」とその親の単交雑および自殖系統の表現型安定性
- 作物の栽植密度と栽植様式 : (1)ダイズの子実収量とその構成要素
- ダイズ莢数の遺伝子型と環境との相互作用に及ぼす生物的環境効果の評価
- 十勝におけるワイルドライス(Zizania palustris)の試作
- コムギ葉の秋季伸長成長性に対する選抜効果
- 劣性wx遺伝子をもつ春コムギ品種の胚乳アミロース含量の変異
- マツヨイグサの種子照射による放射線感受性
- コムギ胚乳アミロース含量のwx座による発現調節
- 2008年から2010年におけるジャガイモ生育の年次変異(平成22年度年次講演会一般講演)
- コムギ穂発芽耐性(種子休眠性)遺伝子QPhs.ocs-3A1の精密マッピング(平成22年度年次講演会一般講演)
- コムギの粒色遺伝子R-A1,R-B1,R-D1と種子休眠との関係(平成22年度年次講演会一般講演)
- 強力粉・薄力粉適性の優れる強種子休眠性白粒コムギ系統の作出に向けて(平成22年度年次講演会一般講演)
- ゼンコウジコムギ由来の白粒コムギ系統の発芽温度反応の解析(平成22年度年次講演会一般講演)
- 白粒コムギ系統の種子休眠性と農業形質向上にむけたマーカー利用選抜(平成22年度年次講演会一般講演)
- ゼンコウジコムギ×Chinese Springの組換え自殖系統を用いた種子休眠性に関するゲノムワイドなQTL解析(平成24年度年次講演会一般講演)