8.カテキンの抗腫瘍活性と緑茶の教材としての可能性について
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概要
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京都は日本の茶の文化の中心地であるとともに伝統的なお茶の産地でもある。それゆえ京都ではお茶をテーマとして生徒が生活する地域に結びつけて「日本の伝統文化」,「地元の産業」,「日常の生活環境と健康」といったように身近で総合的な学習を設定することができる。そこで本研究では,「日常生活環境と健康」の面からお茶をとりあげ,緑茶の薬効を実験的に示す実験教材を開発するための基礎的検討をおこなった。緑茶に含まれるポリフェノール類の主要成分であり,いくつかの薬効をもつと考えられているカテキン類のうち,茶葉とお湯で入れた緑茶に最も多く含まれるエピガロカテキンガレート(EGCg)を選びその抗腫瘍活性と正常の細胞への影響を調べた。お湯で入れた緑茶の中に含まれる濃度の1/100程度の濃度でEGCgをマウスのTリンフォーマ癌細胞の培養に添加すると,癌細胞の増殖は顕著に抑制された。それと同じ濃度でEGCgを癌細胞に作用させ,トリパンブルー色素で死細胞を染色する方法を用い,4,8,24時間と時間をおって癌細胞の生細胞と死細胞を顕微鏡下で数えたところ,死細胞の割合が直線的に増加し24時間で約90%になった。正常の胸腺細胞に対してはこのようなEGCgの効果は認められなかった。このようなEGCgの抗腫瘍活性はEGCgを水溶液の状態に置くと速やかに失活することが分かった。本研究でおこなった実験を実験教材として使用することを考えると:1)EGCgは市販されていて比較的安く入手できる,2)癌細胞を低濃度のEGCgを含む培養液に入れて培養すると24時間以内にほとんどの細胞が死亡するので,2日連続で同じ時間帯に実験の時間を組むことができれば効果的な実験になる,3)EGCgの殺癌細胞活性はお湯で入れた緑茶に含まれる濃度の1/100程度の濃度で観察されるので,日常生活で飲んでいる緑茶のほんの少量を癌細胞の培養に入れてその殺癌細胞効果を観察できる,など教材としての長所と特色をあげることができる。
- 京都教育大学の論文
- 2005-03-31
著者
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