4.学生教育を意図した地域社会への卒業研究のプレゼンテーションの試み
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
大学の主要な役割は学生数育と各専門分野の研究である。しかし,現在の社会では,これらに加えて地域社会に向けて開かれた大学としての役割が求められている。このような要求に応えるために,公開講座の開講やインターネットによるさまざまな情報発信など多くの企画が工夫されている。我々の研究室でもこのような要求に応えるため,教育大学としての特色ある取り組みを模索してきている。その取り組みのひとつとして,1997年の大学祭(藤陵祭)で我々の研究室の4回生の卒業研究の一部を展示する企画をたてて実行した。この企画の目的は次の3つであった。1)主に地域の小中学生対象に,4回生の卒業研究の一部を平易にプレゼンテーションすることで地域社会へのはたらきかけとする。2)この企画を通じて卒業研究生が専門分野の研究内容を理解し,その内容について一般向けのプレゼンテーションと教材化のトレーニングをする。3)大学祭(藤陵祭)を教育大学としての特色あるアカデミックな地域社会との交流の機会として利用しつつ,大学祭への各研究室からの参加を促し,学問的な企画を増して大学祭を充実させる。この企画には,地域の小学生とその親を中心として200人以上の参加を得ることができた。参加者には簡単なアンケートに答えてもらい,この展示の評価,感想,研究室への要望を聞いた。社会人の回答のなかには,この企画を積極的に評価する意見が見られ,また,会場での会話の中で,もっとこのような企画を行ってほしいとの要望などもいくつか出された。プレゼンテーションに密接に関連した卒業研究のテーマは,「正常および腫瘍細胞の増殖機能に及ぼす静止強磁場の影響」,「B16メラノーマ細胞の転移と抗腫瘍免疫機能に及ぼす電磁場の影響」,「B16メラノーマ細胞の高転移株と低転移株を使った癌細胞の転移の基礎的研究」,「緑茶成分による癌の増殖と転移の抑制効果に関する研究」の4つであり,これらを融合した内容で教員養成課程の4回生が中心となって,研究の動機,背景,実験結果を紹介する展示を準備した。特に,現代の文明社会に生活する我々の生活環境と我々の健康との関係に注意を向け,4回生自身への環境教育と小中学生への環境教育につながるように意図して,展示の準備をするように4回生に指示した。また,癌の発生,増殖,転移の各過程と,そこに働くNK細胞とT細胞を中心とする腫瘍免疫の仕組みを,上映時刻を決めて小中学生対象にOHPを使ってやさしく説明した。今回の企画には,このように多くの地域の人々の参加を得ることができた。また,卒業研究生の自主性と創意工夫によって,しっかりとしたプレゼンテーションが準備されて実行された。これらのことから当初の目的はほぼ達成されたと評価できる。そして,この企画を今回の一回で終わることなく,毎年実績を積み重ねることで学内にアピールしていこうと考えている。
- 1998-03-31
著者
関連論文
- P-18 理科教育における心のはぐくみ : 唾液アミラーゼ活性の視覚化(ポスター発表,日本理科教育学会第58回全国大会)
- 5.学生教育を意図した地域社会への卒業研究のプレゼンテーション : 第四報
- 生命科学教育の教材化を目的とした細胞培養法の簡易化
- 学生教育を意図した地域社会への卒業研究のプレゼンテーション : 第二報
- 11.癌細胞の高転移性株の分離 : 免疫系による「自己・非自己の認識」と「抗腫瘍免疫の機能」を理解するための観察教育実験への利用
- 11.抗羊赤血球抗体の明確な定量法に関する基礎的研究
- ゼルンボン化合物とそれらのマウスEL4培養細胞への細胞増殖阻害
- カユプテの葉に含まれる多置換ポリフェノール成分とそのマウスEL4培養細胞への細胞増殖阻害
- タイ国への理科教育援助(3)研修員内地研修
- 癌細胞のアポトーシスに及ぼす静止強磁場の影響