日本近海産の珍らしいイカ類について IX : カンテンイカ Chaunoteuthis mollis の大量出現
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概要
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カンテンイカChaunoteuthis mollis Appellofはこれまで東大西洋及び地中海から7標本, インド洋から2標本しか知られていない稀種であったが, 1984年大船渡漁港に三陸沖で偶然漁獲された同種1.2トン(約1200個体)が水揚げされた。1標本を残して他は頭足部と外套膜のみが商品に製せられてしまったが, 従来稀種とされていたものが, 一挙に大量出現したことは報告に値する。本種の形態学的特徴については過去の論文に多くを加えるところはないが, Nesis(1970)がはじめて指摘した眼胞腹面の発光器をいっそう詳かに観察ができた。また, 触腕柄の残存状態は個体によってまちまちで, タコイカのように幼稚期に失われるのではなく, 成体に近くなってから先端が切断するものと推定される。腹面に残されている精虫嚢を植えこむためにつけられた瘡の様子はツメイカにおけるものと形態的に極めて似ており, 軟甲の形態等の特徴と相まって, 両種はきわめて近い関係にあることが示唆される。従来の報告では本種は暖海域性と考えられていた。今回の大量出現は混合水域で起こったが, 暖海域起源ではないかと推定される。
- 日本貝類学会の論文
- 1986-03-31
著者
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