向きを表す単語と記号に対する時空間的脳活動の比較(<特集>脳と知覚)
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概要
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同じ意味を有する単語と記号を提示された際のヒト脳内処理過程を比較するため,本研究では同じ意味を有する単語と記号として,向きを示す単語(漢字:上,下,左および右)と記号(矢印:↑,↓,←および→)の8種類を視覚刺激として用い,被験者がこれらの視覚刺激を観察する際の脳波(electroencephalograms: EEGs)を計測した.実験では,それぞれの刺激を30回ずつ,合計240回の提示を行った.本研究では正常な視覚を有する20〜21歳の女性4名を被験者として実験を行った.計測されたEEGsを刺激の種類別に加算平均を求め,事象関連電位(event related potentials: ERPs)を得た.得られたERPsの傾向を比較すると,漢字提示の場合には"上"または"下"では潜時420ミリ秒前後で,"左"または"右"では潜時500ミリ秒程度で振幅の大きな変化が観察された.矢印提示の場合には,全ての刺激に対して潜時500ミリ秒程度で振幅の大きな変化が観察された.同じ向きを意味する漢字と矢印とでのERPsを比較すると,それぞれ潜時の差は存在するものの,振幅の大きな変化に関しては同様の傾向であった.また逆の向きを意味する漢字同士あるいは矢印同士のERPsを比較すると,振幅の大きな変化が観察されたピーク潜時はほぼ同様であったが,その極性は逆であった.ERPsのピーク潜時を重点的に等価電流双極子推定(equivalent current dipole source localization: ECDL)法を試みた結果,潜時110ミリ秒前後でMT野に,続いて潜時300ミリ秒以前で中心前回にECDが推定された.この傾向については8種類すべての推定結果で大きな差はみられなかった.中心前回にECDが推定された以後では,漢字提示の場合,刺激の向きによらず右中側頭回にECDが推定され,その後左中側頭回のWernicke野,左角回,左舌状回など言語に関係する部位にECDが推定された.その後左中前頭回および左下前頭回に,その後前頭前野にECDが推定され,ERPsの振幅が大きく変化する直前に中心前回にECDが推定された.一方矢印提示の場合には,右中側頭回にECDが推定され,その後右下前頭回および右中前頭回など空間認知のワーキングメモリとされる部位にECDが推定された.その後は漢字提示と同様に前頭前野,そして中心前回にECDが推定された.逆の向きを意味する視覚刺激で推定されたECDを比較すると,ERPsが逆向きのピークを示す潜時ではほぼ同様の部位にECDが推定されていたが,そのモーメントは異なっていた.
- 2006-06-15
著者
-
菅野 道夫
同志社大学文化情報学部
-
山崎 敏正
九州工業大学生命情報工学科
-
山崎 敏正
理化学研究所遺伝子多型研究センター
-
山ノ井 高洋
北海学園大学工学部電子情報工学科
-
豊島 恒
(株)ジャパンテクニカルソフトウェア
-
大西 真一
北海学園大学工学部電子情報工学科
-
豊島 恒
北海学園大学工学部電子情報工学科
-
山崎 敏正
NECバイオIT事業推進センター
-
菅野 道夫
同志社大学
-
山ノ井 高洋
北海学園大学工学部
-
山ノ井 高洋
北海学園大学
-
豊島 恒
北海学園大学大学院工学研究科
-
山ノ井 高洋
北海学園大 工
-
大西 真一
北海学園大 工
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