ラットの扁桃核および海馬キンドリングに対するAF64A脳室内投与の影響

概要

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Ethylcholine mustard aziridinium ion (AF64A)は作用時間の長いcholinotoxinで,側脳室へ投与すると選択的に海馬のcholine acetyltransferase activity (ChAT活性)を低下させ,コリン系の機能低下を長期に惹起することが知られている。われわれは側脳室にAF64Aを投与後,海馬と扁桃核のキンドリングを行い,海馬コリン系の辺縁系キンドリングにおける役割を検討した。AF64Aの側脳室投与により選択的に海馬のChAT活性が低下し,前頭葉皮質,線条体,扁桃核では変化は見られなかった。キンドリングパラメータではAF64A群,比較対照の生理食塩水群で後発射誘発閾値,全般化けいれん誘発閾値およびそれぞれの持続時間,全般化けいれん出現潜時などでは有意な差は認められなかった。しかし,全般化けいれん出現までの刺激回数はAF64A群で扁桃核刺激の際に増加し,海馬刺激では減少していた。AF64A群の扁桃核刺激では扁桃核発作〜皮質運動発作の時期がより長く,海馬刺激では無動を主体とする海馬発作の時期が短縮していた。この結果から,海馬コリン系は発作の全般化及び脳内他部位への発作伝播に影響を与えるが,扁桃核発作,海馬発作ではその関与の仕方が異なる可能性が示唆された。
1997-12-31