健常者とDuchenne型進行性筋ジストロフィー症患者における口蓋形態の成長変化

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筋の機能低下を主な症状とするDuchenne型進行性筋ジストロフィー症(DMD)患者では,疾患の進行に伴って特異的な咬合異常(開咬)が発現する.また,DMD患者は巨舌を伴うことが多く,これが口蓋の成長変化に与える影響は大きいと考えられる.そこで今回,DMD患者の口蓋の成長変化を健常者と比較,検討する目的で本研究を行った.健常者の資料として,男子13名,女子18名の9〜15歳までの経年資料で,男子81個,女子121個の上顎石膏模型を用いた.また,DMD患者の資料として,男子患者21名の9〜15歳までの経年資料で,111個の模型を用いた.計測装置は非接触型三次元形状計測装置を用い,模型計測に先だって,実験モデルを使用した誤差検定を行った.測定誤差は最大で0.68mmであり,十分な精度を有すると考えられた.模型計測部位として上顎第一大臼歯口蓋断面部における,口蓋の幅,深さ,断面積,口蓋角度について計測を行った.結果は,ほとんどの計測項目において健常者男女の性差は認められなかった.健常者において口蓋角度は経時的に減少し,他の計測項目では増加する傾向にあった.また,口蓋の成長スパートは女子のほうが男子よりも早く訪れることが示唆された.DMD患者は,口蓋の幅,深さ,断面積において健常者男子に比べ有意に大きく,とくに拡大が口蓋の側壁部分に顕著にみられた.しかし,DMD患者の口蓋角度については大きな変化は認められなかった.DMD患者の口蓋の過成長は,(1)巨舌の補償として,上顎歯槽部が下方へ成長した,(2)舌圧の増加により口蓋とくに側方部への機能的圧力が増した,(3)咽頭部での気道維持機構の秩序の乱れが,口蓋形態に対して特異的な形成変化を生じさせた,(4)咀嚼筋の機能減退により上顎第一大臼歯の挺出を引き起こし,上顎歯槽部の下方への成長が促進された,以上の4点が推察された.
日本矯正歯科学会の論文

健常者とDuchenne型進行性筋ジストロフィー症患者における口蓋形態の成長変化

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