矯正治療目標としての切歯の位置と角度の設定法 : 良好な咬合を対象にした検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
矯正患者は多様な上下の顎関係に応じた不正咬合を示している。したがって,さまざまな顎関係に対応した治療目標としての基準を確立しなくてはならない。上下顎の水平関係に対する歯の補償については定量的に良く知られているが,上下顎の垂直関係に対する歯の補償についてはあまり知られていない。本研究の目的は切歯の位置と角度が,上下顎の前後的関係のみならず上下顎の垂直的関係にどのように関連しているのかを調べ,臨床応用することである。そこで,切歯の位置の設定法を知るために,安定した良好な咬合を備えかつ多様なfacial typeをした成人女性44名を対象として,歯に関する計測項目と顎骨および歯に関する計測項目との間の相関関係を調べた。ステップワイズ回帰分析の結果,以下の回帰方程式を得た。1)下顎切歯切歯点の前後的位置は,∠ANBとLower facial heightの組合せと強く関連し,両変数は下顎切歯点のNBまでの距離L1-NBを目的変量とした重回帰方程式y = 0.7x_1+0.2x_2-1-9.0,(x_1 = ∠ANB,x_2 = Lower facial height)で示され,重相関係数はr = 0.79であった。2)切歯角は切歯点の前後的位置L1-NBおよび∠AB-SNとの組合せと強く関連し,両変数は下顎切歯の前頭蓋基準線に対する角度L1-SNを目的変量とした重回帰方程式y = -1.9x_1+0.8x_2+4.8,(x_1 = L1-NB,x_2 = ∠AB-SN)で表された(r = 0.95)。3)上下切歯軸間角∠Inter-incisa1はL1-NBとLower facial heightの組合せと強く関連し,重回帰方程式y = -3.3 x_1+0.6x_2+106.7,(x_1 = L1-NB,x_2 = Lower facial height)で表された(r = 0.88)。以上のことより,切歯の位置と角度は上下顎の前後的関係および垂直的関係と強く関連していることがわかった。
- 日本矯正歯科学会の論文
著者
-
中島 昭彦
九州大学大学院歯学研究院 口腔保健推進学講座 咬合再建制御学
-
中島 昭彦
九州大学大学院歯学研究院口腔保健推進学講座
-
中島 昭彦
九州大学大学院歯科研究院口腔保健推進学講座
-
中島 昭彦
九州大学大学院歯学研究院・口腔保健推進学講座・咬合再建制御学分野
-
玉利 和彦
九州大学大学院歯科研究院口腔保健推進学講座
-
玉利 和彦
九州大学歯学部矯正学教室
-
奥山 義昭
九州大学歯学部付属病院矯正科
-
中島 昭彦
九州大学大学院歯学研究院 口腔保健推進学講座 咬合再建制御学研究分野
-
中島 昭彦
九大・歯学研究院
関連論文
- 下顎前突症患者の咀嚼筋活動に関する研究 : 最大かみしめ,ガム咀嚼時の評価
- 口唇と切歯および上下顎の位置関係
- 顎口腔機能の四次元的解析システム : 顎変形症患者への応用(受賞記念口演,第39回学術大会)
- 顎裂部への二次的自家海綿骨細片移植術における移植骨の術後吸収の評価
- 新しく開発した薄膜センサを用いた舌圧・口唇圧同時計測システムの構築およびその臨床応用
- 下顎枝矢状分割法における術後下顎骨安定性のセファログラムによる検討 - 線結紮固定とミニスクリュウ固定法の比較 -
- 歯髄幹細胞を用いた gene therapy 法による象牙質再生
- 正常咬合者および顎変形症患者のスマイル動作の三次元解析
- 顎口腔機能の四次元的解析システム : 顎変形症患者への応用
- 高精度頭部モデル構築による顎形状・機能の可視化と診断支援 : 4次元顎運動可視化システム(福祉・医療のためのパターン認識・メディア理解)
- 顎変形症患者における下顎運動四次元表示システム
- Duchenne型筋ジストロフィー症成人患者の開閉口筋機能の変化と顎顔面骨格形態の変化との関係について
- Duchenne 型筋ジストロフィー症患者における顎開閉筋機能の平衡性と顎顔面骨格形態との関係について
- 矯正治療目標としての切歯の位置と角度の設定法 : 良好な咬合を対象にした検討
- 頭部X線規格写真分析用テンプレート(スーパーインポーザー)の外科的矯正治療への応用
- 咀嚼機能の研究-2-反対咬合について
- タッピングにおける正常咬合者と不正咬合者の咬合接触の動的解析
- タッピングにおける正常咬合者と不正咬合者の咬合接触の動的解析
- タッピングにおける正常咬合者と不正咬合者の咬合接触の動的解析
- 咬合面圧分布の動的解析法
- 成人正常咬合者における歯列咬合面圧分布と顎顔面形態との関係について
- 両側臼歯部下顎骨体部分切除術と舌縮小術による骨格性下顎前突症を伴う開咬の一治験例
- 歯の先天的欠損部を矯正治療とインプラント補綴で修復した症例について
- 時効硬化性金合金の bonding retainer への応用の可能性
- 咬筋における筋音の解析 : 咬合力および筋電図との関連性について
- 顎顔面非対称性と咀嚼筋機能の平衡性について
- 口呼吸と顎顔面の成長変化との関連 : 模型および正面頭部 X 線規格写真分析
- 口呼吸患者とその親子の顎顔面形態の類似性
- 口呼吸患者における顎顔面形態 : 遺伝および環境要因の分析
- マウス歯牙移動時の破歯細胞におけるシスタチンCの局在に関する研究
- 日本人における閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者と健常者における軟口蓋と咽頭軟組織の形態差についての頭部X線規格写真による分析
- 日本人における閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者と健常者の顔面骨格の差違 : Ricketts 法による頭部X線規格写真解析
- 薄型マグネットを用いた埋伏歯牽引法に関する研究 : NdFeB 磁石を使った牽引力の測定
- 静磁界のROS17/2.8cellに及ぼす影響
- 食習慣指導と関連した食品物性と咀嚼筋活動の評価
- 健常者とDuchenne型進行性筋ジストロフィー症患者における口蓋形態の成長変化
- アモルファスセンサを用いた顎関節変位および振動の評価法
- 三次元CT画像を用いた現代日本人成人男女の頭部生体計測と顔面標準三次元物理モデルの構築
- 日本人片側性口唇口蓋裂患者における歯の形成と骨の発育
- 縦断資料を用いた下顎第三大臼歯歯胚形成に関する研究
- 上顎第一大臼歯歯冠形態の親子類似性 : モアレ法とフーリエ解析を用いた分析
- 顎裂部への自家海綿骨細片とHA顆粒混合移植術の術後評価
- 顎口腔機能の四次元的解析システム : 顎変形症患者への応用
- 顎変形症患者における顎顔面形態の三次元統合システムの開発
- 高精度頭部モデル構築による顎形状・機能の可視化と診断支援 : 4次元顎運動可視化システム(福祉・医療のためのパターン認識・メディア理解)
- 高精度頭部モデル構築による顎形状・機能の可視化と診断支援 : 4次元顎運動可視化システム(福祉・医療のためのパターン認識・メディア理解)
- 顎変形症患者の咬筋のMRIによる形態学的分析 : 下顎側方偏位症例について
- S106 咬合状態を考慮した下顎骨の応力解析方法についての研究(力学適応能,自己組織化能を有するバイオマテリアル-生体インターフェイスの創製,SP1:シンポジウム1)
- 536 個々の患者の下顎骨に対する応力解析方法についての研究(OS6-3:硬組織のバイオメカニクス,オーガナイズドセッション6:硬組織のバイオメカニクス)
- 頭部X線規格画像を用いた顎顔面骨格3次元形状可視化システムの構築
- 顎歯列形態・機能解析を目的とした4次元顎運動可視化システムの開発
- 前歯のかみ合わせと顔の動きとの関係 : 高速度カメラを用いた3次元顔面動作計測
- 日本人成人男女の三次元骨格基準モデルの構築
- 下顎前突症患者の下顎枝矢状分割術による形態変化の三次元的シミュレーション
- X線規格画像を用いた3次元頭部物理モデムの構築とその臨床応用
- BMP2を用いた歯髄細胞導入治療法による象牙質再生
- 開窓と歯牙牽引療法によって良好な歯列が誘導できた巨大な下顎含歯性嚢胞の1例
- 高速度カメラを用いた口唇の発語運動解析
- 親子類似性に基づく顎顔面形態の二次元的個成長予測
- 「美しく魅力的な顔」とは : 顔の評価における生物学的背景を考える
- 九州大学病院矯正歯科における顎変形症患者の臨床統計調査(臨床)
- 外科的矯正治療と矯正単独治療の境界にある下顎前突症例の治療前後の顎顔面形態の比較
- 新しいタイプのセファロ分析用テンプレート
- 歯科矯正学における分析・診断をもう一度考える(特別講演I,第46回北海道矯正歯科学会大会)
- 矯正歯科医から小児歯科医へのメッセージ
- 下顎第三大臼歯先天欠損と骨成熟,歯の大きさおよび萌出時期との関係
- 大学院教育と歯科医学研究の動向