Salmonella typhimuriumの線毛とそのマウス腸管定着における役割
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概要
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S. typhimurium線毛株の10^3〜10^7個をマウスに経口投与した場合, 本菌は投与後1〜3日目に小腸の中部および下部, ならびに大腸, 特にその壁に定着した. その後, 腸管においては投与菌の明確な増殖が認められた. そして, 投与菌量の増加に伴ない, 菌の増殖は顕著であった. 菌投与後3〜5日目から, 腸管膜リンパ節, 肝および脾から菌が回収され, これらの臓器に肉眼病変が形成された例がみられた. 肝では, 菌投与5〜14日の間に10^2〜10^7/gの菌が回収された. 10^5個菌投与マウスでは, 菌投与後6日目に1頭が, 10^7個菌投与マウスでは, 菌投与後6〜13日の間に7頭が敗血症死した. 菌投与7日目から, マウスでは投与菌に対するO, Hおよび線毛抗体が検出された. 一方, 非線毛株をマウスに投与した場合, その腸管における菌の定着は認められなかった. しかし, 例外的に10^5〜10^7個菌を投与された少数のマウスでは, 接種菌に対するOおよびH抗体の産生がみられた. これに対し, 線毛および非線毛株をマウス腹腔内に接種したところ, 両者共に前報におけるものとほぼ同様なLD_<50>値を示した. In vitroの実験で, 供試線毛菌はマウスの腸管粘膜の絨毛の表層に多数付着している所見が走査電顕によって観察された. 一方, 非線毛菌による実験では粘膜表層部に菌を検出することが出来なかった. 以上の成績は, 投与菌が腸管粘膜に定着する上に, その線毛が役割を演じていることを示唆しているものと思われる.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1981-02-25
著者
-
勝部 泰次
国立予防衛生研究所
-
今泉 清
国立予防衛生研究所獣疫部
-
田中 饒
国立予防衛生研究所獣疫部
-
勝部 泰次
国立予防衛生研究所獣疫部
-
武藤 健
国立予防衛生研究所獣疫部
-
武藤 健
国立予防衛生研究所
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