大阪府におけるコガタアカイエカの生態と日本脳炎ウイルス保有状態に関する研究
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概要
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1.大阪府和泉市の郊外にある某牛舎を中心とした地域で, 1963年以来毎年蚊を定量的に採集した.牛舎・水田ともにコガタアカイエカ(シロハシイエカを含む)は, 採集された蚊の総数の90%以上を占めていた.また, 牛舎に集まる蚊とドライアイスに誘引される蚊とでは, その種類構成の上では差がなかつた.2.コガタアカイエカの活動は7, 8月が最盛期であるが, さらにこまかな消長については, 地域や年次により異ることが観察された.3.この地域の水田では, コガタアカイエカの発生が優占位を占め, 幼虫は7月上旬から8月下旬にかけて発生し, とくに7月に顕著な発生がみられた.4.牛舎に侵入したコガタアカイエカ個体群の吸血率は, 7月中旬から8月上旬にかけてとくに高く, 8月中旬以降にはそれが50%前後を持続するようになつた越冬蚊の出現する4月下旬から5月上旬にかけて再び高い吸血率を示した.5.牛舎の周辺に群飛するコガタアカイエカは, 通常地上3〜5mのところに観察された.性比をみると, 最盛期ではメスの占める比率がかなり高いが, 9月にはいるとオスの比率が急に増加し, 下旬にはオスばかりの群飛がみられるようになつた.6.牛舎の中に侵入するコガタアカイエカ個体群は, 牛舎の周辺に活動する蚊や, ドライアイスで採集される蚊とくらべて, 生理的に年令のすすんだ個体が多いことを示した.7.経産蚊率の周年遷移から, コガタアカイエカの発生の周年消長を解析した.それによると, 1966年においては, 新生第1世代の成虫は5月中旬に出現し, 9月上旬に最終の羽化が行なわれ, この間においておおむね6世代くりかえされたことが推定された.8.ウイルス感染蚊の出現時期は, 年によつて多少のずれのあることが明らかになつた.ヒトの流行のサイズが感染蚊の個体群密度の大小で決定されるものと予想するならば, ウイルスの増幅サイクル時における蚊の発生密度が流行のサイズに決定的な要因となるものと思われる.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1968-12-31
著者
-
上羽 昇
大阪府立公衆衛生研究所
-
新井 浩
大阪府立公衆衛生研究所:ヤクルト研究所
-
武衛 和雄
大阪府立公衆衛生研究所
-
前田 章子
大阪府立公衛研ウイルス課
-
前田 章子
聖マリア学院大学 看護学部
-
中島 貞夫
大阪府立公衆衛生研究所医動物室
-
上羽 昇
Osaka Prefectural Institute Of Public Health:(present Address)earth Environmental Service Co. Ltd.
-
中島 貞夫
大阪府立公衆衛生研究所:(現)関西女子短期大学
-
前田 章子
大阪府立公衆衛生研究所
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