利益計算思考の変遷とこれからの会計の役割
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概要
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本稿では、会計の目的、役割と利益計算思考の変遷を辿り、情報提供機能として会計が果してきた役割を再確認するとともにこれからの会計が取り組むべき課題について考察している。とりわけ、21世紀は、「見えざる(ものの)価値」の存在が企業を評価するうえで大きく影響することから、こうした価値の重要性を認識し現状での会計の取り組みについて、その概要を述べている。これまで会計が担ってきた役割と利益計算思考を振り返ると、1960年代より現在までは意思決定有用性アプローチによる情報提供機能、つまり、過去の収支計算から利益分配による利害調整機能だけでなく将来の業績をも見通す会計情報の開示が要求され、それらはたとえ予測値であってもバランスシートをはじめ他の財務諸表等に開示され、会計責任(アカウンタビリティ)は確保されてきた。そこでは収益・費用アプローチから資産・負債アプローチへと利益計算思考の流れもみることができ、測定属性も取得原価主義から現在価値測定を含む時価主義へと、会計はその時代が求める経済システム、企業形態や経営組織の変化を敏感に捉え柔軟に対応し、情報提供機能という役割を果たしてきたと思われる。しかしながら、21世紀は、企業の「見えざる(ものの)価値」が「見えざる富の創造」をなし、それが企業の価値形成に大きく係わり影響を及ぼしてきたことからオフ(..)バランス項目である「見えざる(ものの)価値」のオン(..)バランス化が喫緊の課題となってきた。したがって、これからの会計に求められるのは、「見えざる富の創造」に対する包括的なアプロ-チの確立をはじめ"企業の価値創出能力の算出"を含む"高度な情報提供機能"である。しかしながら、この問題に対する解決は決して容易ではなく、これまで会計が採ってきた利益計算思考そのものの変更を余儀されることにもなるであろう。それらは、財務データだけの活用から定性的データも含めたものの活用であり、また、バランスシートからのアプローチと損益計算書からのアプローチの統合化、さらには統計的な手法や IR をはじめとした報告書形式等の活用である。
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