会計目的を達成するための認識・測定アプローチ
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概要
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本稿の目的は、企業活動に関する写像を組織的に提供するとした会計目的に適合する認識・測定アプローチとしていかなるアプローチが適切なのか、また、利益計算の認識・測定システムが会計目的とどのようなかかわりをもってきたのか、その変遷を明らかにし整理をすることである。意思決定有用性アプローチにより、会計機能にもとめられたのは、当該企業の財政状況や経営成績等、企業の"ありのままの姿"を組織的に描き出すことであった。本稿では、意思決定有用性アプローチによる会計思考の変化を3つの点((1)利益計算の特質、(2)利益計算の思考、(3)測定原理の拡大)で確認をした。(1)では、それまでの処分可能性から業績指標性へむけてのより多くの関心と収益の認識に「実現可能性基準」の適用をみたこと。(2)では、利益計算の思考が、収益・費用アプローチから資産・負債アプローチへと移行し、包括利益概念の導入がなされたこと。(3)では、測定原理として、時価・現在価値測定がそれまでの原価主義にかわってその役割を担うようになったこと、である。こうした変化、つまり実現可能性基準、資産負債アプローチ、時価・現在価値測定の具体的な適用例を3つの基準((1)金融商品会計、(2)減損会計、(3)退職給付会計)にて概観をした。そこでは、確実なる測定値ばかりではなく将来事象の予測値までをも積極的に計上することで企業の現況を伝達しようとしていることは認めることができる。しかしながら、いくつかの批判も指摘できる。たとえば、(1)現在価値測定自身に対する批判、(2)財務報告が示す測定値についての批判、また、(3)未実現評価損益の取り扱いに対する考え方である。いかなるアプローチが会計目的を達成するアプローチとして適切なのか、それは新しく多様な取引の出現による会計事象の把握とともにこれからの検討課題である。
- 摂南大学の論文
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