「会計測定値」に関する一考察--混合した測定値の意味するところ
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概要
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本稿では、今日の会計測定値が、ハイブリッド評価の状況にあることから、そこで計算される"利益"の意味について考察している。結論をいえば、開示を主とする会計での"利益"と、従来の利益計算を主とする会計から計算される"利益"とは、"質"の異なったものである。つまり、「開示」、情報提供機能を優先させたことから測定値は各々異なった測定基準で計算されるが、それらは予測を含んだ不確実なものでもあり、計算される"利益"も意味のよくわからない不完全な数値である。だが、「利益計算」を主とする従来の会計(原価・実現主義会計)では、こうしたことは起こらず、確実なる利益(分配可能利益)の計算が可能である。一方、"利益に関する情報"は、利害関係者にとって、それは最低限、知りたい情報である。そこでは"確実なる利益"、分配可能な利益が求められ、こうした確かな利益があってはじめて企業の将来予測も可能になり、それはまた企業の実態・リスク開示の前提でもある。よって、原価・実現主義会計は今日でもその有用性により多くの支持がされるべきである、と考える。 なお、会計では、「開示」か「利益計算」か、という問題をしばしば損益計算書の報告形式の問題として置き換えて議論されるが、そこでは「開示」と「利益計算」を融合した報告スタイルが求められる。現在、わが国には"包括利益"の導入はされていないものの「補完の論理」の構図を援用すれば、その導入も充分に考えられる。
著者
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