快・不快感情を伴う自伝的記憶の再認反応時間に及ぼす抑鬱傾向の劾果

概要

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本研究では, 被験者の抑鬱性傾向が, 快・不快感情を随伴する出来事の記憶の再認に対して, いかなる影響を与えるかを検討した. 健常な大学生40名が2つの実験に参加した. 実験1では, 被験者に, まず, 誕生から高校3年生の3月31日までに起きた出来事についての記憶を, 30分間にできるだけ多く想起し, その内容を記録用紙に記入することを求めた. 次に, 想起内容に対する特殊・一般性評定, 及び想起内容に随伴する感情(快, 不快)評定を求めた. また, 質問紙を用いて被験者の抑鬱性傾向を測定した. その約1ヵ月後に実施された実験2では, 同一の被験者に対して, 各披験者が実験1で再生した想起項目に対する再認課題を実施し, 再認反応時間を測定した. その結果, 高い抑鬱性傾向を示す被験者群は, 実験1において各人が特殊で, かつ不快感情を随伴すると評価した想起項目の再認において, より長い反応時間を示した. この結果は, 抑鬱性傾向が, 不快な出来事の記憶を思い出す個人の能力に影響を与えていることを示唆する.
社団法人電子情報通信学会の論文
1999-05-13