走査サッカードと記憶誘導性サッカードの適応の転移について

概要

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走査サッカード (S-sacc) への適応は記憶誘導性サッカード (M-sacc) と定常視標へのサッカード (VI-sacc) の両者に転移するというDeubelの報告と, 我々が以前に行った実験結果であるM-saccとVI-saccは互いにほとんど適応の転移を生じないという報告の, 一見矛盾した結果がある. そこで, S-saccの性質を明らかにすることを主眼として, 主系列特性と適応の転移の二つの観点から実験を行った. その結果, S-saccとM-saccは全く異なる主系列特性をもち, S-saccとVI-saccはほぼ同一の特性をもつことがわかった. また, S-saccの適応のどの段階でもM-saccと同様の主系列特性は得られなかった. 一方, S-saccとM-saccへの適応を単独にかけ, 他方への転移の様子を調べる実験を行った結果, 適応の転移は非対称にやや大きいが, 完全な転移ではないことがわかった. また, S-saccとM-saccに対して同時に, 振幅の伸縮の方向が逆方向になるような適応をかけると, それぞれ選択的に適応が進んだ. これらの結果から, S-saccとM-saccはやや大きなクロストークを非対称にもつサッカードであることが示唆された.
社団法人電子情報通信学会の論文
1999-01-25