隠喩理解 : 連想実験に基づく考察

概要

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隠喩は我々の日常生活において頻繁に現れる表現形態である。隠喩は日常の伝達を効率的にするだけでなく、外部世界を新しい視点から解釈し直し、創造的な伝達を可能にするための手段となっている。そのため、隠喩理解は自然言語理解を計算機上で行なう上でも非常に重要な課題となる。しかし、隠喩は統語論や意味論ではとらえきれない表現形態であり、計算機上で隠喩理解を行なうためには、新しい意味の探索、推論方法が必要となる。我々はこれまでに隠喩理解システムの構築を目的とした研究を行なってきた。隠喩には、「死んだ隠喩」と「生きた隠喩」がある。前者は、ステレオタイプ化され、ほどんど字義通りに解釈されるような隠喩であり、後者はステレオタイプ化されていないものである。我々のシステムでは、後者の「生きた隠喩」の理解を目的としている。また、隠喩理解のモデルとしては相互作用説を採用している。相互作用説では、趣意(例えるもの)と媒体(例えられるもの)が代表する「観念」あるいは「思考」が相互に作用しあって、そこに新たな観念、あるいは思考が生み出される。こうして得られた所産が隠喩の意味であるとする。ここでいう媒体によって連想される「観念」あるいは「思考」といわれるものは、生物的物理的事実の他、迷信の類や神話などを含み、また、日常的文化的背景によって異なり、容易にかつ迅速にその項目が連想されるような事柄である。一般に、「ある事柄について連想されることを特に考えずに述べよ」というような問いに対する答えがそれに比較的近いものであると考えられる。よって、隠喩理解には連想というメカニズムが非常に重要な要素であり、連想を行なうための連想網の構築が隠喩理解システムの実現には必要不可欠になると考えられる。連想網を実現するには、まず、実際に人間が媒体となる概念に対してどのような連想を行なうか、さらに、その連想結果が隠喩文における趣意に対してどのように作用するか、そのメカニズムを解明し、人間の連想過程をモデル化する必要がある。本論文では、人間の連想過程を解明するために行なった連想実験の結果とそれに対する考察を述べる。[table]
一般社団法人情報処理学会の論文
1990-09-04

隠喩理解 : 連想実験に基づく考察

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