北海道南部沿岸山地流域における森林が河川および海域に及ぼす影響 (I) : 山地流域から津軽海峡に流出する浮遊土砂と有機物

概要

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沿岸山地流域から海域に生産される浮遊土砂,有機物量を明らかにするため,北海道南部亀田半島の津軽海峡に注ぐ天然林流域(流域面積13km^2)において流量と水質の測定,分析を行った。観測期間は1992年4月から11月までの8カ月間で,期間中に降雨による出水が月に1回以上の頻度で発生した。観測の結果,平水時においては,土砂濃度は3〜6mg/lであり,夏期にやや高くなる傾向が認められ,浮遊土砂に含まれる有機物の割合は30〜50%であった。出水は降雨の直後に発生し,急速な立ち上がりと急速な減水後,逓減状態が2〜3日間継続して基底流出に達した。浮遊土砂濃度は流量ピークより0〜6時間速くピークに達し,とくに6〜9月には117〜307mg/lの高いピーク濃度が観測された。有機物のピーク濃度は浮遊土砂の25%程度であり,浮遊土砂より速く減衰する傾向がみられた。観測期間中に212tの浮遊土砂が海域に流出し,このうち有機物は55tで26%を占め,平均日流出量は76.8kg/km^2となった。出水時に流出する浮遊土砂量は全浮遊土砂量の大部分を占めており,山地流域から生産された土砂が海域に流出する上で出水がきわめて重要な役割を果たしていることがわかった。
一般社団法人日本森林学会の論文
1995-09-01