婦人科癌培養細胞におけるc-myc遺伝子産物の発現とその解析

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c-myc遺伝子産物 (c-myc蛋白) は, DNA合成開始因子として機能することから, 腫瘍細胞の増殖動態に密接に関与すると考えられている。そこで, c-myc蛋白を婦人科癌細胞の増殖能や悪性度の判定に応用する前段階として, その培養癌細胞における発現を検討した。OMC-1 (頚部扁平上皮癌株), OMC-2 (内膜腺癌株), OMC-3 (卵巣ムチン性腺癌株) およびOMC-4 (頚部腺癌株) を用いた。まず各培養細胞を95%ethanol, 10%formalin又は10あるいは1, 000mM NaCl添加4%paraformaldehyde (PFA) で固定後, 抗c-myc蛋白モノクローナル抗体を一次抗体として酵素抗体ABC法を行った。次に1×10^7個の各培養細胞からlow salt lysis法により抽出した核および細胞質画分に対し, 同抗体を用いてwestern blottingを, またphenol抽出, ethanol沈殿により得られたDNAサンプルに対し, c-myc第3エクソンに相補的なプローブを用いてslot blot hybridizationを行った。95%ethanol, 10%formalin固定では核と細胞質が染色された。NaCl添加4%PFAでは, 10mMでは細胞質も染色されたが1,000mMでは核がほぼ特異的に染色された。使用した抗体は, 核画分に対しては, OMC-1では66Kd, OMC-2, 3, 4では62Kdの蛋白を認識し, これらはc-myc synthetic peptideによる吸収試験で消失した。細胞質画分に対する反応性はみられなかった。またヒト胎盤DNAをコントロールとした場合OMC-2で15倍, OMC-4で5倍のDNA増幅が観察された。ヒト婦人科癌培養細胞におけるc-myc蛋白の発現が形態学的, 生化学的に確認された。しかしethanol, formalin固定や低塩濃度下では, c-myc蛋白の細胞質へのredistributionが生じたことから, 染色結果の判定には固定法に十分留意すべきであると考えられた。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1991-11-01

婦人科癌培養細胞におけるc-myc遺伝子産物の発現とその解析

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