長距離ランナーの安静,最大下運動におけるリポ蛋白代謝
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概要
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長期間にわたって持久的トレーニングを行ってきている長距離ランナーと,日常,運動習慣を有していない者を被験者として,それぞれの安静時,運動中,運動終了後のリポ蛋白代謝について検討した.被験者には,毎週150km以上走行している大学陸上部長距離ランナー5名,ならびに非運動群として文学部学生5名の計10名を選んだ.なお,これらの被験者は,すべて肥満,高脂血症,喫煙,加齢,疾病などを有していない.実験方法は,60%V^^・o_2maxの運動強度で30分間固定負荷法による自転車エルゴメーター運動を行わせた.その結果を示すと次のごとくである.1)安静時における長距離ランナー群は,非運動群に比べて,VLDL中のCho.,TG,PLが低く1%水準で有意な差を認め,一方,HDL中のCho.,PLが逆に増加し,5%水準で有意の差を認めた.2)安静時におけるVLDL-TGとHDL-Cho.,VLDL-TGとHDL-PLの関係は、それぞれ1%,0.1%水準で有意な負の相関を認めた.HDL-Cho.とHDL-PLの関係は,0.1%水準で有意な正の相関を認めた.3)最大下運動を行った場合,長距離ランナー群では,運動開始とともにVLDL中のTGが低下し,運動終了直後約12%の減少を示した.しかし,非運動群では,ほとんど変化がみられず,長距離ランナー群とは異なっていた.また,両群ともしDLおよびHDL中のPL,Cho.に変化がみられなかった.以上の成績から,運動に対応するエネルギー産生に際し,長距離ランナー群は,非運動群に比較して脂質を利用する割合が多く,今回行った最大下運動においても運動中VLDL中のTGが分解してエネルギーを供給していたことが考えられた.しかし,LDLおよびHDL中のPL,Cho.に変化がみられなかったことから、一過性の運動においてはVLDL中のCho.,PLが他のリポ蛋白へ転送される可能性の少ないことを示していた.しかし,安静時において両群間を比較すると,VLDLとHDL中の脂質組成に有意な差や相関が認められたことから,長期間にわたる持久的な運動の積み重ねによって体内リポ蛋白代謝過程に微妙な変化をきたさせ,VLDL中のPL,Cho.が徐々にHDLへ転送されていることが考えられた.
- 1984-10-01
著者
-
中野 昭一
東海大学医学部
-
寺尾 保
東海大学医学部生理学教室
-
三好 基治
東海大学医学部生理学教室
-
成澤 三雄
東海大学医学部生理学教室
-
吉岡 利忠
東海大学医学部生理学教室
-
成澤 三雄
国際武道大学体育学部
-
寺尾 保
東海大学医学部生理
-
中野 昭一
東海大学 医学部
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