わが国暖地で栽培したウェスタン・ホワイト小麦の品質、形態ならびに生態的特性について
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概要
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わが国暖地産小麦は輸入小麦にくらべて粉色がおとるため、粉色の改善が望まれている。著者らは粉色のすぐれたウェスタン・ホワイト小麦を、わが国暖地で栽培し、その品質および形態ならびに生態的特性を調査することによって、粉色改善育種上の交配母本としてウェスタン・ホワイト小麦を利用しうるか否かを確めようとした。ウェスタン・ホワイト小麦の代表的品種であるGainesおよびOmarの種子を米国からとり寄せ、その大半は品質検定のため低温で貯蔵し、残部を福山水田圃場に播種した。また参考として輸入原麦ウェスタン・ホワイト小麦から系統分離した早熟3系統を、比較品種として農林61号・シラサギコムギを播種した。収穫された種子の品質検定は、農林省基準の小麦品質検定法によって行なった。また米国から取寄せ低温貯蔵した種子の品質検定も収穫された種子の検定と同時に行なった。得られた結果の概要は次のようである。(1)GainesおよびOmarは晩熟のため梅雨に遭遇し、千粒重が低下し、低収であった。また、赤かび病罹病率が非常に高かった。ウェスタン・ホワイトから分離された早熟3系統はGainesやOmarよりは早熟で、千粒重も高かったが、赤かび病には弱くかなり罹病した。(2)GainesおよびOmarの原粒灰分は原産地のものでは低かったが、福山に栽培した場合には高かった。また福山産のGainesおよびOmarの粉色は、わが国暖地品種よりも劣った。小麦粉生地の粘弾性調査はブラベンダー試験機によって行なったが、ファリノグラムには暖地栽培による影響はみられなかった。福山産のGaines、Omarおよび選抜早熟系統のエキステソソグラム伸張抵抗は、わが国暖地品種なみ、またはそれ以下であった。わが国暖地小麦はアミログラフ最高粘度で高く、めん加工に適した特性とされているが、福山産Gaines、Omarおよび選抜早熟系統では、いずれも低かった。(3)わが国暖地の小麦豊熟期間の気象は、ウェスタン・ホワイト小麦産地にくらべると、日照時間、降水量、関係湿度の点ではるかに不利であり、本来良質なウェスタン・ホウイト小麦も品質が低下し、その生態的特性もわが国暖地には適さないことが明らかとなった。わが国暖地産小麦は短日遅延度の小さい春播型の品種であり、赤かび病には比較的強いが、ウェスタン・ホワイト小麦は短日遅延度が大きく、秋播型の品種であり、赤かび病に罹病しやすいので、ウェスタン・ホワイト小麦のもつ良質性をわが国暖地小麦品種に導入するためには、多くの遺伝子間の組換を必要とし、かなりの困難が予想される。
- 1969-10-31
著者
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