台湾イネ品種台中65号に見出された早生遺伝子の同定

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台湾のイネ品種台中65号(T65)は,出穂期遺伝子E_1,E_2,E_3およびEf-1とは座を異にする早生遺伝子`v'(仮称)をもつ(奥本ら1992b)。この遺伝子は,Se-1座の早生遺伝子Se-1^eと酷似した作用価をもち,出穂を著しく促進する。本研究では,まずT65と出穂期検定系統ERとの交雑F_2を供試して,vとSe-1^eとの異同を調査した。次いで,T65,ERおよび出穂期検定系統LRを10,13,14,15および16時間日長下で栽培してそれらの日長反応性を調べ,vの低緯度地帯稲作における役割を考察した。T65の出穂期に関する遺伝子型はE_1E_1E_2E_2E_3E_3vvef-1ef-1、ERおよびLRの遺伝子型はそれぞれE_1E_1e_2e_2E_3E_3Se-1^eSe-1^eEf-1Ef-1およびE_1E_1e_2e_2E_3E_3Se-1^uSe-1^uEf-1Ef-1である。また,E_1,E_2E_3およびSe-1座は主として感光性を,Ef-1座は基本栄養生長性を支配すること,およびERは染色体6上でSe-1^eと密接に連鎖するいもち病抵抗性遺伝子Pi-z^tをもつことが明らかにされている。T65とERとの交雑F_2における出穂期の頻度分布は単頂分布を示し,明瞭な超越分離個体は出現しなかった。また,F_2個体をPi-z座に関する遺伝子型に従って3群(Pi-z^tPi-z^t,Pi-z^t+,++)に分け,これら群問で出穂期の変異を比較したところ,変異範囲および平均値に関して差異が認められなかった。これらのことから,vはSe-1^eと同一の遺伝子であることが明らかになった。T65は,ERおよびLRと比較して,著しく大きな基本栄養生長性を示した。T65およびERの限界日長が16時間以上であるのに対して,LRのそれは14〜15時間であり,LRの限界日長がT65およびERより短いこと,およびT65の過剰日長条件下における出穂遅延度はLRと比べてはるかに小さく,ERと同程度であることが認められた。これらの結果と,T65,ERおよびLRの出穂期に関する遺伝子型から,T65の弱感光性はERと同様にSe-1^e(=`v')の作用によること,また,その大きな基本栄養生長性はEf-1座の晩生遺伝子ef-1の作用によるものであることが明らかになった。したがって,Se-1^e(=`v')は,ef-1とともに,夏において自然日長が短く,また,その季節変化も小さい台湾の稲作に重要な役割を担っていると考えられた。
1998-06-01

台湾イネ品種台中65号に見出された早生遺伝子の同定

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