トマトの生育への影響と窒素の集積および同化
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
作物に窒素肥料を過剰に施用した場合の生育への影響および吸収された窒素の体内代謝を知る目的で, トマト (品種, TVR2号) を材料としてポットによる土耕栽培試験を実施した. 窒素の過剰条件は硝酸態, アンモニア態および有機態の肥料による追肥で設定し, それぞれNO_3区, NH_4区, Org区とした. ポット (生土2.9kg) 当りの施肥量は, Nとして過剰区では基肥量が1.0gで, 追肥量が1.25g, 2.5g, 5.0g, 10.0g, 20.0gの5段階とし, 1週間ごとに5回分施した. また, 基肥のみで栽培した標準区を設けた. 1. NO_3-10.0g区, NO_3-20.0g区とNH_4-20.0g区ではトマトの葉にネクロシスが発現した. また, 過剰施用量5.0g以上のOrg区では葉が萎凋した. 2. トマトの乾物重は標準区がもっとも大きかった. 過剰区の中ではNH_4区>Org区>NO_3区の順の大きさであった. また, いずれの過剰区も窒素施用量が多くなるに従い乾物重が低下する傾向がみられた. 3. 体内の全窒素含有率は加除浮くのなかでは, NH_4区>NO_3区>Org区の順であった. とくにNH_4区, NO_3区では標準区より高く, また, 施用量が多くなるほど高くなる傾向がみられた. しかし, Org区では施用量にかかわりなく, 標準区とほぼ同程度であった. 4. 葉中の窒素成分を形態別にみると, 遊離アミノ酸含量がいずれの区でも標準区より高かった. また, NO_3区では硝酸態窒素が, 過剰施用量5.0g以上のNH_4区ではアンモニア態窒素が高かった. これらの窒素成分はいずれも施用量が多くなるに従い増加する傾向がみられた. 5. 窒素吸収量は, 過剰区の中ではNH_4区>Org区> No_3区の順であったが, NH_4-1.25g区を除いては標準区より少なかった. また, 施用量が多くなるに従い窒素吸収量は少なくなっていた. この低下傾向はNO_3区とOrg区では乾物重の傾向と一致していたが, NH_4区では窒素吸収量が多いわりには乾物重が小さかった. 6. 葉中無機成分の内, P_2O_5およびCaO含有率はいずれの過剰区も標準区より低かったが, K_2OおよびNgO含有率は過剰窒素の形態により異なり, 一定の傾向がみられなかった. 7. 標準区および窒素の過剰施用量2.5g, 5.0g, 10.0gの区の基肥に重窒素のラベルのNaNO_3を使用し, ^< 15 >N 希釈法により過剰窒素の吸収量を推定した. それによると過剰窒素の吸収割合はNH_4区>Org区>NO_3区の順に高かった. この傾向は乾物重および窒素吸収量と同様であった.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1987-08-05
著者
-
松丸 恒夫
千葉県農業総合研究センター
-
米山 忠克
農林水産省農業研究センター
-
米山 忠克
農業研究センター
-
石塚 潤爾
農業生物資源研究所
-
松岡 義浩
千葉県農業試験場
-
米山 忠克
生資研
-
松岡 義浩
特定非営利活動法人水環境研究所
-
松丸 恒夫
千葉県農試
-
石塚 潤爾
農業生物資源研究所:(現)九州大学農学部
関連論文
- 40 根箱における施肥位置の違いが野菜の生育・窒素吸収に及ぼす影響 : (第2報)根菜類におけるニンジンとダイコンとの違い(関東支部講演会,2006年度各支部会)
- 接ぎ木栽培によるトマトの汁液栄養診断に基づく追肥量の削減
- ネギのチェーンポット内全量窒素施肥が生育および収量に及ぼす影響
- 夏どりネギにおけるチェーンポット内施肥の施肥窒素量と追肥窒素量の検討
- 14 根箱における施肥位置の違いが野菜の生育・窒素吸収に及ぼす影響 : (第1報) ホウレンソウとダイコンの違い(関東支部講演会, 2005年度各支部会講演要旨)
- 施設トマトにおける汁液栄養診断に基づく追肥法の現地実証
- 施設トマトにおける施肥前の土壌中硝酸態窒素量が栄養診断に基づく施肥量に及ぼす影響
- トマトおよびコムギを用いた窒素過剰障害の発生機作の解明
- トマトの生育への影響と窒素の集積および同化
- 50 日本各地で栽培されたダイズのδ^N値と窒素固定の寄与の推定
- 40 ブドウの催芽促進におけるNH_4^NO_3の吸収と代謝(関東支部講演会要旨)
- 19.窒素の過剰吸収が作物の窒素代謝に及ぼす影響(第2報) : 過剰のNaNO_3及びNaClで処理された小麦とトマトにおける窒素化合物の集積と同化(関東支部講演会講演要旨)
- 33 窒素の過剰吸収が作物の窒素代謝に及ぼす影響(第1報) : トマトにおける形態的特徴の変化と窒素の集積及び同化について(関東支部講演会講演要旨)
- 6-12 大豆根粒のATP濃度と窒素固定能について(6.植物の代謝および代謝成分)
- 91 大豆の生長と固定窒素,化合態窒素の分配について-^N法による追跡
- 非マメ科植物に共生窒素固定系を賦与するための研究戦略と問題点 : 2. 根圏の窒素固定からエンドファイテック窒素固定
- 生育時期別に同化された炭素のダイズ子実への転流と子実生産への寄与について
- 半乾燥熱帯地域の深層アルフィソル土壌におけるキマメを基本にした4間作の根の動態と吸収窒素の由来について
- 22 アルフィソル土層深の違いが間作によるキマメの窒素給源間の配分に及ぼす影響
- 5-43 ソルガム-キマメ間作体系における窒素収支について(5. 植物の無機栄養および養分吸収)
- 安定同位体を用いた植物代謝の研究
- 2Ba-1 ^P-NMRによる種々の植物細胞内コンパートメントの観測
- 重窒素の発光分光分析へのモレキュラーシーブの利用
- 南九州テフラ断面土壌のδ^C値とδ^N値に基づく古植生推定の試み
- 堆肥および化学肥料を施用した水田におけるδ^N値を用いた水稲の起源別窒素量の推定の試み
- 3種の土壌を充填したライシメーターでの施肥窒素のδ^N値と栽培作物,浸透水,土壌のδ^N値の関係
- 窒素施用形態の違いが茶樹の硝酸, シュウ酸およびポリアミン含有率に及ぼす影響
- 肥料の種類の違いが茶園土壌と茶棚のδ^N値に及ぼす影響
- 安定同位体(^N,^C)を用いた植物の栄養構造の研究
- バイオサイエンスのためのアイソトープ測定機器 (第二シリーズ)
- δ^N解析による下水汚泥中窒素の植物による吸収について
- 27 施肥窒素の形態変化を繰り入れた硝酸溶脱のモデル化(関東支部講演会,2007年度各支部会)
- 49 パンライシメータ法による関東ロームにおける硝酸溶脱のモデル化(関東支部講演会,2006年度各支部会)
- 77 パンライシメータ法による関東ローム堆積露地畑における^N標識硫安の溶脱(関東支部講演会, 2005年度各支部会講演要旨)
- 水稲栽培における系外流出抑制技術の環境影響評価(関東支部講演会, 日本土壌肥料学会支部講演会講演要旨集2004年度)
- 47 自然降水条件下の黒ボク土における埋設型ライシメータ集水部壁高の検討とその集水特性(関東支部講演会)
- 51 黒ボク土における埋設型ライシメータ集水部の壁高の検討(関東支部講演会)
- 暗期にイネ幼植物地上部の呼吸により放出される炭素の由来
- 6-40 水稲コシヒカリの生育時期別に固定された炭素(^C)の分配と分げつ生産力(6. 植物の代謝および代謝成分)
- 多収性日印交雑稲と日本稲の生育時期別に同化された炭素の分配と分げつ生産力の差異 : ^Cトレーサー実験による解析
- 6-23 水稲(むさしこがね、水原258)の分げつ有効化に伴う炭素(^C)の固定と分配(6.植物の代謝および代謝成分)
- 5-17 ポット栽培多収水稲の栄養生理特性 : 炭素(^C)・窒素(^N)・ミネラルの吸収と分配(5.植物の無機栄養および養分吸収)
- 23 大豆のウレイド集積 : N_2固定、N栄養の影響の再検討(関東支部講演会要旨)
- 6-12 定比活性^CO_2利用によるダイズの子実形成に寄与する時期別同化産物の量的把握(6. 植物の代謝および代謝成分)
- 6-11 ダイズ根粒バクテロイドおよびサイトソルにおける炭素代謝について(6. 植物の代謝および代謝成分)
- 6-8 ダイズ根粒バクテロイドにおける有機酸代謝の検討(6.植物の代謝および代謝成分)
- マメ科作物の窒素固定とミュ-タントの利用
- ダイコンの生育バランスと品質
- 牛ふん炭化物の施用量および多量施用土壌の除塩がコマツナの生育と養分吸収および溶脱塩類に及ぼす影響
- 68 牛ふん炭化物多量施用土壌の除塩がコマツナの生育と塩類の溶脱に及ぼす影響(関東支部講演会, 2005年度各支部会講演要旨)
- 牛ふん炭化物中リン酸,カリの肥料効果 : 特にコマツナに対する多量施用の影響
- 牛ふん炭化物の施用がコマツナの生育に及ぼす影響(関東支部講演会, 日本土壌肥料学会支部講演会講演要旨集2004年度)
- 培地の窒素形態およびCa : K比がホウレンソウとコマツナの硝酸, アスコルビン酸, シュウ酸含有率に与える影響 : 窒素等栄養条件による葉菜類の品質成分の変動(第2報)
- 窒素施用がホウレンソウとコマツナの生育と糖, アスコルビン酸, 硝酸, シュウ酸含有率に与える影響 : 窒素等栄養条件による葉菜類の品質成分の変動(第1報)
- 培地カルシウム濃度の違いがキュウリ, コマツナの生体液のカチオン・アニオン濃度におよぼす影響
- 6-4 ホウレンソウ・コマツナの窒素栄養条件による糖・ アスコルビン酸含有率の変動(6. 植物の代謝および代謝成分)
- 44 スイカトンネル栽培における被覆肥料を用いた減肥技術(関東支部講演会,2006年度各支部会)
- マルチ内施肥によるトンネル春夏どりニンジンの減肥栽培
- 6-18 窒素施肥法と登熟期の玄米中食味関連成分の変動(6. 植物の代謝および代謝成分)
- 11-18 農村集落排水の畑地への灌がい利用が作物の生育、収量に及ぼす影響(11. 環境保全)
- 水田土壌における^N標識肥料の有機態画分およびバイオマス窒素への分布
- 4 水田土壌に於ける施肥窒素の有機態窒素画分中の分布と動態について(東北支部講演会要旨)
- 農耕地からの農薬流出対策とその評価
- 作物栄養診断におけるデータベースの活用 : キュウリのMn欠乏・過剰症診断への応用例
- 6-14 低タンパクビール麦カールの窒素集積とタンパク質組成(6. 植物の代謝および代謝成分)
- 殺菌剤クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害
- 重窒素二酸化窒素の生体内動的観察
- 高等植物におけるシグナルとしての"リン酸"
- サトウキビ茎葉での窒素固定 高い寄与率に注目.根粒形成とは別のシステムとして期待
- 高炭酸ガス環境下で植物はどのように生育するか
- GC/C/MSによるナノモル量化合物の^C/^Cおよび^N/^Nの自然存在比のオンライン分析
- 5分でできる炭素・窒素の同位体自然存在比の分析
- II-3 植物における炭素・窒素の流れ(II. 植物生産性の生理生化学)
- 6-22 大豆shootにおけるアラントインの代謝(6. 植物の代謝および代謝成分)
- 6-19 茶樹における^N標識尿素の葉面吸収と代謝(6.植物の代謝および代謝成分)
- 101 大豆における^N-硝酸,アスパラギン,アラントインの分配と代謝
- 土壌-植物系における炭素, 窒素, 酸素, 水素, イオウの安定同位体自然存在比 : 1987年以降の研究の進歩
- 地球環境工学シリーズ4 清らかな水のためのサイエンス : 水質環境学, 水質環境学編集委員会編著, A5判, 207pp., 3,200円, (内税・送料学会負担), 農業土木学会(東京), 1998年
- 被覆肥料利用による畑地からの肥料窒素溶脱抑制
- 黒ボク土と砂質土における肥料窒素溶脱のライシメーター法による解析
- 土壌中の高濃度ナトリウム塩および塩化物がキュウリの生育と無機成分の吸収に及ぼす影響
- 36 畑耕地からの肥料窒素の溶脱 : (第2報)黒ボク土と砂質土における溶脱量の比較(関東支部講演会要旨)
- 11-51 畑耕地からの肥料窒素の溶脱 : (第3報)被覆肥料の利用による溶脱軽減対策(11.環境保全)
- 16 Naclの土壌集積がキュウリの生育に及ぼす影響(第4報) : 各種農作物の生育および体内無機成分との比較(関東支部講演会要旨)
- 11-3 畑耕地からの肥料窒素の溶脱(第1報) : ライシメーターにおける浸透水の排出特性(11. 環境保全)
- 熱水抽出による植物体簡易塩素分析
- 89 雨水の化学的性質と耕地への負荷(関東支部講演会要旨)
- 26 NaClの土壌集積がキュウリの生育に及ぼす影響 : (第2報)NaCl過剰条件下における体内成分の変化(関東支部講演会要旨)
- 5-6 NaClの土壌集積がキュウリの生育に及ぼす影響 : (第3報)各種塩類の土壌集積との比較(5.植物の無機栄養および養分吸収)
- 52 NaClの土壌集積がキュウリの生育に及ぼす影響(関東支部講演会要旨)
- 1F12 25年にわたる関東甲信静地域での光化学スモッグによる植物被害調査 : (1)植物被害の経緯と調査方法の確立
- 土壌診断のための可給態成分の分析 : 簡易・迅速分析器の変遷
- 光化学オキシダントによる水稲可視障害の研究 : 第1報 光化学オキシダントによる葉障害原因の立証
- 11-28 水田における有機質汚濁水の浄化機能(11 環境保全)
- 畑土壌中のクロロタロニル消失過程における炭素同位体分別
- 家畜における炭素同位体自然存在比のトレーサー利用 : 飼料中13C自然存在比が乳牛の糞, 血液および乳汁中13C自然存在比におよぼす影響
- 土壌-植物系における炭素,窒素,酸素,水素,イオウの安定同位体自然存在比:変異,意味,利用
- 窒素肥料有効利用のための施肥法
- 大気汚染物質の農作物に対する影響とその被害対策に関する研究
- 重窒素法ならびにアセチレン還元法を用いたin situ水稲根圏の空中窒素固定能の測定