シロクローバを利用したスイートコーンのリビングマルチ栽培体系における窒素フローの推定(作物生理・細胞工学)
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概要
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リビングマルチ栽培には土壌侵食の防止や雑草抑制効果などのメリットがあるが,作物との間に窒素の競合が起こることが懸念されていることから,シロクローバを利用したスイートコーンのリビングマルチ栽培体系における窒素の流れを調べた,試験を実施した3年間では,スイートコーンの収量及び窒素含有量はリビングマルチ栽培と慣行栽培で同じであった.シロクローバの窒素含有量は,播種時には6.85gm^<-2>,中間刈取り時には4.87gm^<-2>であり,両者の計である11.72gm^<-2>の窒素が刈取りによって土壌中に供給されると考えられた.一方,スイートコーン栽培期間中のシロクローバの窒素吸収量は7.11gm^<-2>であり,そのうちの5.10gm^<-2>が固定由来窒素と推定され,土壌及び肥料由来窒素量は1.55gm^<-2>と少なかった.土壌浸透水量と硝酸態窒素濃度の積により算出した窒素溶脱量は,3年間の平均でリビングマルチ栽培区が慣行栽培区より少なかった.重窒素を利用した^<15>Nトレーサー試験では,スイートコーンの吸収した窒素のうち27.3%(2.48gm^<-2>)がシロクローバ刈取り残さ由来であり,土壌及び肥料由来窒素量は6.62gm^<-2>であった.これらの結果より,リビングマルチ栽培ではシロクローバの刈取りにより土壌に供給された窒素の多くがスイートコーンに移行しており,一方で土壌及び肥料から収奪される窒素量及び窒素溶脱量が少ないことから,スイートコーンとシロクローバの間の窒素に対する競合は小さいと考えられた.リビングマルチ栽培では,窒素フロー図から推定した土壌からの窒素のアウトプット量が慣行栽培より2gm^<-2>程度少なく,窒素の施用量を低減できる可能性が示唆された.
- 日本作物学会の論文
- 2004-12-05
著者
-
小柳 敦史
農業・生物系特定産業技術研究機構
-
三浦 重典
中央農業総合研究センター
-
小林 浩幸
(独)農研機構 中央農業総合研究センター
-
小林 浩幸
東北農研
-
小柳 敦史
作物研究所
-
渡邊 好昭
農業・食品産業技術総合研究機構
-
渡邊 好昭
農業・生物系特定産業技術研究機構作物研究所
-
小柳 敦史
東北農業研究センター
-
三浦 重典
農業・生物系特定産業技術研究機構
-
小林 浩幸
農業・生物系特定産業技術研究機構
-
小林 浩幸
東北農業研究センター福島研究拠点
-
小林 浩幸
農研機構 中央農業総合研究セ
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