幼穂形成期から出穂期にかけての遮光処理が水稲の根系の形成および収量に及ぼす影響 : 第1報 根長密度に着目した場合
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概要
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水稲の幼穂形成期から出穂期にかけての期間に, 人為的に遮光処理 (遮光率22%) を行い, 根の長さ・分布と収量への影響を根長密度に着目して解析した。品種コシヒカリを供試し, 福井県農業試験場圃場 (細粒強グライ土壌) で栽培した。収穫直前に遮光区と遮光しなかった対照区において株下および株条間 (相互に隣接する4株の中央部分) から, ステンレス製の円筒を用いて, 深さ30 cmまでの根を採取し, 土層別にルートスキャナーで根長を測定し, 根長密度 (単位土壌体積中に存在する根の総長) を算出した。遮光処理により, とくに一穂籾数が強い影響をうけ, 登熟歩合, 千粒重にも影響が及び収量は約10%減少した。根長密度は株下, 株条間の両部位とも表層から深さ20 cmまでの各層で遮光区が対照区より小さく, とくに, 株下の5〜10 cm, 株条間の0〜5 cm, さらに株下, 株条間の15〜20 cmの層で顕著な減少がみられた。なお, 20 cm以下の層では差がみられなかった。根長密度の値を利用して10 a (深さ30 cmまで) 当りの総根長を推定したところ, 対照区で49,200 km, 遮光区では38,100 kmとなり, 遮光区が対照区より20%以上短くなっていた。以上の結果から, 処理期間の日射量は水稲の収量, 根系形成に著しい影響を及ぼすことが明らかにされ, 根の量的形質と収量形質との密接な関連性が示唆された。
- 日本作物学会の論文
- 1990-03-05
著者
-
岩田 忠寿
福井県農業試験場
-
山崎 耕宇
東京大学農学部
-
山崎 耕宇
東京農業大学生物産業学部
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間脇 正博
福井県農業試験場
-
菅 徹也
東京大学農学部:(現)日本たばこ産業(株)遺伝育種研究所
-
森田 茂紀
東京大学農学部
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