DBCP-活性代謝物による生体高分子物質のアルキル化と細胞壊死
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概要
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DBCPによる生体高分子物質のアルキル化と細胞壊死との関係を20 mg/kgから致死量の400 mg/kgの^<14>C-DBCPをウィスター系雄ラットに1回経口投与して調査した.^<14>Cはラット体中でおもに肝臓と腎臓の遠位尿細管部に分布した(20および200 mg/kg).これら標的臓器における^<14>Cの形態は生体高分子物質と結合したものが主体を占めており, この結合は投与量(20-400mg/kg)の増大とともに増加した.肝臓中のグルタチオン量はDBCPの投与量の増加とともに減少し, グルタチオン量と結合量との間に逆相関性が認められた.組織内のDBCP残留量も投与量に比例して増加したが, いずれの投与量においても組織内^<14>Cのわずかな部分を占めるにすぎなかった.phenobarbital前処理は致死量DBCPによる致死作用を高め, 肝および腎臓中での細胞壊死強度, 高分子物質への結合, 尿中への排泄を高めた.またそれら組織中のグルタチオン量の低下を促進したが肝臓中の非結合^<14>C量には影響を与えなかった.SKF-525A前処理は上記のDBCPによる効果をいずれも低減させ, また腎臓中の非結合^<14>C量を増大させた.グルタチオンの同時投与は死亡率と高分子結合を抑制し非結合^<14>C量を増大させた.これらの結果からin vivoにおける高分子物質との結合はin vitro実験で先に報告したと同様にmicro-somo上で形成されるDBCPの活性代謝中間体によるものであり, またこの高分子物質との結合(アルキル化)が個体死に結びつく細胞壊死を引き起こしていると考えられた.またグルタチオンは標的臓器中のDBCP活性代謝中間体を不活性化して高分子物質との結合を抑制することによって細胞壊死, 致死作用を軽減していると考えられた.
- 日本農薬学会の論文
- 1980-02-20
著者
-
牧 伸一
Chemistry Division, The Institute of Environmental Toxicology
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牧 伸一
Chemistry Division The Institute Of Environmental Toxicology
-
俣野 修身
残留農薬研究所
-
後藤 真康
Chemistry Division, The Institute of Environmental Toxicology
-
加藤 保博
Division of Chemistry, Institute of Environmental Toxicology
-
佐藤 清
Division of Chemistry, Institute of Environmental Toxicology
-
原田 孝則
Division of Toxicology, Institute of Environmental Toxicology
-
牧 伸一
Division of Chemistry, Institute of Environmental Toxicology
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俣野 修身
Division of Chemistry, Institute of Environmental Toxicology
-
後藤 真康
Division of Chemistry, Institute of Environmental Toxicology
-
原田 孝則
Division Of Toxicology Institute Of Environmental Toxicology
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